イタリアサッカー代表のマンチーニ監督は先日、5月28日のサウジアラビアとの対戦、6月1日の対フランス、同4日の対オランダ戦へ向けての招集メンバーを発表した。
マンチーニ監督の初指揮となるそれらの試合では、ニースのFWマリオ・バロテッリも招集される。バロテッリはインテル・ミラノとマンチェスターシティでマンチーニ監督の下でプレーした。
バロテッリはイタリアチームを主導すると見られた逸材。2012年の欧州選手権では期待通りの活躍を見せた。
しかしその後は低迷。激しやすく協調性を欠く性格などもあいまって、2014年を最後にイタリア代表の座からも遠ざかっていた。
マンチーニ監督は教え子ともいえるバロテッリをいち早く招集したが、一方で現在のイタリアチームの主柱の1人であるローマのダニエレ・デ・ロッシを外した。
マンチーニ監督は、インテル・ミラノで3連覇し英マンチェスター・シティでは44年振りに優勝を呼び込むなど、指揮官としてすばらしい実績を持つ。
その一方で、マンチーニ監督は国際試合に弱い、という陰口にもさらされ続けている。チャンピオンズリーグなどでの成功がほとんどないからだ。
ジンクスは破られるためにある。マンチーニ監督の「国際試合に弱い」というジンクスもそのうちに破られるかもしれない。だが破られないジンクスもある。それが運命、あるいはもっと重い言葉でいうなら宿命だ。
彼の教え子ともいえるバロテッリは、ここ2年ほどは所属のニースで調子を取り戻しつつあるものの、依然として不安定な要素に満ちている。
また前述のようにイタリアチームには突出した選手がいない。11人のレベルは世界クラスだが、「違いを演出」できる選手、特にファンタジスタがいないのだ。
それは致命的な欠陥だ。イタリア最高峰の監督の一人であるファビオ・カペッロはかつて「勝利への監督の貢献率はせいぜい15%かそこら。残りは選手の力で試合に勝つ」という趣旨のことを言った。
ゲームを支配するのはほとんどが選手の力なのだ。その選手の能力が今のイタリア代表にはない。いや、10人の卓越した選手はいるのだ。10人を活かす「イタリア然」とした選手、つまりファンジスタがいないのである。
マンチーニ監督はそれを作り出せない。マンチーニ監督に限らない。全ての
「ナショナルチームの監督」は、選手を育成することはできない。国際試合の時だけ選手と接触する彼らにはそんな時間はないのだ。
招集された30人の選手を見るとため息がで出る。いずれも小粒、どんぐりの背比べのような印象。バロテッリの招集は期待を抱かせてはくれるが、やはり未知数だ。
だが、繰り返しの指摘になるが、全体としての彼らのレベルは高い。しかしファンタジスタの不在がチームをひ弱に見せる。見せるだけではなく実際に勝てない。
マンチーニ監督が自らの「運命」を変え、バロテッリを救世主に仕立て上げ、それによってイタリア代表チームにかつての輝きをもたらすかどうか。
試金石となる3戦がいよいよ明日から始まる。
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