イタリア連立政権樹立騒動にまたドンデン返し。ドンデン返しがきわまって元の木阿弥。コッタレッリ首相候補をスタンバイにし、コンテ首相候補を元に戻して、マタレッラ大統領がノーを突きつけた財務相候補のサヴォナ氏を別職に移動する案が浮上。大統領も再考を了承した。

「コンテ首相+サヴォナ「非」財務相」案は、五つ星運動のディマイオ党首の提案。これに対し連立相手のサルヴィーニ同盟党首は「検討する」と述べるにとどめた。強烈な反ユーロ・反EU主義者のサヴォナ氏を財務相に熱く推しているのはサルヴィーニ氏である。

極右政党・同盟のサルヴィーニ党首は連立政権では内務大臣就任が確実視されている。移民・難民問題は内務省の管轄。サルヴィーニ氏は内務相となって反移民政策を強力に押し進める腹づもりである。そこでEU懐疑派のサヴォナ氏を財務大臣に仕立て、連携してEUとの対決姿勢を鮮明にしたい思惑があるのだ。

マタレッラ大統領にとっては、サヴォナ氏が政権外に去るのが最も受け入れやすい案だろうが、コンテ内閣の成立を否認した彼の動きへの批判が高い現状では、あるいはサヴォナ氏が財務相以外のポストならやむを得ない、としてコンテ内閣の船出を容認するかもしれない。

今日(5月31日)、ディマイオ&サルヴィーニ会談が開かれる。そこでサルヴィーニ氏が「サヴォナ財務相」案を引っ込めてディマイオ氏に同意すれば、いよいよ欧州初の反EU・反移民のポピュリスト政権が成立しそうな情勢。

「反EU・反移民のポピュリスト政権」とはいうものの五つ星運動と同盟は、選挙キャンペーン中の激しいEU批判や移民への敵意発露を抑え気味に動いている。単一通貨ユーロからの離脱は考えない、と言明するほどだ。その真意は分からない。政権発足と同時に牙をむき出して彼らの元もとの主張を実現しようと狂奔するかもしれない。

だがもしかすると、彼らは「極論」を排してユーロ圏にとどまりつつ「EUの経済政策の抜本的な変換」と「EUの移民対策の徹底的な改正」を声高に主張する政権、になるのかもしれない。イタリアの政治勢力は四分五裂している分、過激論者は他の勢力を取り込もうとしてより穏健になる傾向が強い。

「イタリア国内の政治家や官僚の腐敗を除き」「EU本部の現場軽視の横暴な政策の数々に物申し」「イタリア一国が重責を負わされている難民・移民の保護・受け入れをEU全体で背負え」という、彼らの真っ当な要求がEUにすんなりと受け入れられるなら、彼らはEUの敵どころか、EUにとっても建設的な提案をする政権になる可能性も高い。


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