EU&イタリア旗はためくPhoto: Gerard Cerles(AFP)


イタリアのコンテ首相は12日、イタリアの来年度予算の赤字目標額を引き下げる、とEU欧州委員会のユンケル委員長に告げた。EUはこれを評価。予算案をめぐる両者の対立はさらに緩和された。

コンテ首相は大きな注目を集めたGDP比2.4%の赤字予算案を2.04%にまで引き下げると表明。EUはイタリア政府による初めての「意味のある動き」として好感。金融界もその提案を前向きに捉えている。

最終的な罰金を含むEUの「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」がこれで完全に回避されたわけではない。が、EUの財務官僚とイタリアのトリア財務相は、コンテ首相とユンケル委員長の合意を基にさらなる進展を目指して協議を続ける。

イタリアの来年度予算は、ローマの譲歩にも関わらずEUの財務規則のうちに完全に収まるものではない。国の借金を大幅に減らすことを求められているイタリアは、バラマキ予算を見直すことを執拗に迫られている。

それでもイタリア政府は、月十万円余のベーシックインカム(最低所得保障)と年金受給年齢の引き下げは必ず実行するとしている。前者は連立政権の一翼を担う五つ星運動のまた後者はもう一方の同盟の基幹政策だからだ。

ひと口で説明すれば極左と極右のポピュリスト政党、というくくりが該当する組織である両党は、それらの主張をがなり立てることによって政権を奪取したといっても過言ではない。

多様性が盛んであるイタリア共和国には過激論が乱立することが多い。だがまさに多様性の豊かさゆえに国内の政治勢力が四分五裂し、過激論者は他者を仲間に引き入れようとして「より穏健」に傾く。

過激論者であるイタリアのポピュリスト政権が、EUに譲歩したのは偶然ではない。それは過激論者を「妥協」という民主主義の本丸に向かって導く、イタリアの多様性の勝利という見方もできるのである。




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