Geert Wilders,Salvini, Jörg Meuthen, Le Pen 600
真ん中サルヴィーニと右ルペン


欧州議会選挙では親EU派内の最大勢力が議席を失ったものの、少数党が逆に勢力を伸ばして全体としては過半数を確保した。

一方、極右ナショナリストやポピュリスト勢は議席を増やしたが、EUを大きく脅かすほどの勢力拡大にはならず、EUはひとまず安泰という形になった。

だが飽くまでも「ひとまず安泰」なのであり、EU懐疑派の台頭は今後も続くことが予想されている。それだけにEUは、自らの改革を強力に推し進めて彼らに対抗することを迫られている。

極右勢力の中では、イタリアの連立政権を主導しつつある同盟が最も支持率を高めた。同盟のサルヴィーニ党首は、独仏を含むEU内各国の極右政党をまとめて親EUの主流派に挑む構えを見せている。

フランスの極右政党、国民連合はマクロン大統領が率いる共和国前進を僅差で破って第一党に。またドイツの極右AfD(ドイツのための選択肢)は、議席を伸ばしはしたが事前予想ほどには拡大しなかった。

そうした中、EU主要国内で極右政党として唯一政権を担っているイタリアの同盟と、サルヴィーニ党首の存在感が増している。

仏国民連合のルペン党首は「マッテオ(サルヴィーニの名前)は私達の手本」とまで評価して、フランスがイタリアに対して伝統的に持ち続けてきた、「政治的優勢」の立場を捨てて擦り寄っているようにさえ見える。

前回2014年の欧州議会選挙では、イタリアの同盟はわずかな支持率しかなかった。一方、当時国民戦線と称していたフランスの国民連合は、躍進して今回と同じように仏第一党となった。

それでいながらルペン党首がサルヴィーニ氏にへりくだるような姿勢で接近しているのは、同盟が-連立とはいえ-イタリアの政権党である事実と、サルヴィーニ氏が国内での支持率拡大を背景に自信を深めて、カリスマ性を獲得しつつある事実と無関係ではない。

2014年、欧州議会選挙の結果を受けて僕は「欧州の極右勢力が国境を越えて手をつなぎあうことはない。各国の極右政党はそれぞれが孤立して大きな政治の流れを生み出すには至らないだろう」と考えた

しかし、徐々に求心力を得ているイタリアの同盟を中心に、欧州の極右勢力はあるいは一つにまとまって動き出すかもしれない。そして勢力を拡大し欧州の過半分を制して、アメリカでトランプ政権が誕生したようについに主流になる日が来るかもしれない。

欧州のほとんどの極右勢力とトランプ政権は連動している。ということは、つまりそれは日本の安倍政権とも通底しているという考え方もできる。

世界の政治トレンドを極右(志向)ではなく「一国主義」と規定する見方もある。確かにトランプのアメリカファーストにならって、イタリアのサルヴィーニもイタリアファ-ストをスローガンにすることが多い。

だが一国主義こそかつて世界を狂わせたナチズムやファシズムまた軍国主義の元凶である。一国主義は文字通り自分だけがよければ他国はどうでもいい、というコンセプトだ。

それは必ず視野狭窄をもたらし、やがて自らが絶対善となって他者との対話や妥協を拒否し、唯我独尊の罠にはまって究極的にはテロさえも厭わなくなる。まさに極右の在り方だ。

欧州とアメリカとひいては日本までもが極右の完全な支配下に置かれたなら、それは自由と民主主義と人権尊重の概念が死滅した世界、という意味で中露北朝鮮が支配する世界とほぼ同義語である。


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