人々サンマエルコ寺院前の水中を歩く600


《書こうと思いつつ優先順位が理由でまだ書けず、あるいは他の事案で忙しくて執筆そのものができずに後回しにしている時事ネタは多い。僕にとってはそれらは「書きそびれた」過去形のテーマではなく、現在進行形の事柄である。過去形のトピックも現在進行形の話題もできれば将来どこかで掘り下げて言及したいと思う。その意味合いで例によってここに箇条書きにしておくことにした。とはいうものの、これまでではそうやって記録しておいたテーマを改めてじっくりと考察し書き上げたものは少ない。次々と書くべき題材が増えていくからだ。それは刻々と過ぎる時間と格闘するSNSでの表現の良さであり同時に欠点である。ともあれ時事ネタを速報するのが目的ではなく、それを観察し吟味して自らの考えを書き付けるのが僕のブログのあり方なので、『いつか書くべきテーマ』というのは自分の中ではそれなりに意味を持つのである。いつも、「いつか実際に書く」つもりでいるので。。。》



Brexitの命運

Brexitの行方をおそらく9割方決定するイギリス総選挙の動きを見守っている。EU信奉者で英国ファンの僕は、Brexitが反故になることを依然として期待しているが見通しは暗い。Brexitを主導したその名も「Brexit党」のナイジェル・ファラージ党首が、与党・保守党が議席を持つ300余の選挙区に立候補者を立てないと決めたからだ。これで保守党の優勢がますます固まり、選挙後にBrexitが実行される可能性が高まった。ナイジェル・ファラージ氏の政治手腕には驚かざるを得ない。相変わらず政治臭覚の鋭いハゲタカ・ポピュリストだ。それでも僕は、今月いっぱいで任期が切れるトゥスク欧州理事会議長(事実上のEU大統領)が、Brexit阻止を決して諦めてはならないと表明したことに賛同する。EUの結束と英国を含む欧州の若者たちのために。


沈むベニス

ベニスが例年よりも激しい水害に襲われている。11月12日、街の8割が浸水しサンマルコ広場は観測史上2番目となる187センチもの高潮に飲み込まれた。そんな折、沈み行くベニスの救世主にもなると考えられてきた巨大プロジェクト、可動式堤防の「モーゼ」が役立たずであることが判明。少なくとも100年は持つと考えられていた堤防は、製作途中の10年間で錆びついて稼動しないことが明らかになった。莫大な費用が露と消えた。僕は20年ほど前にこのプロジェクトを追いかけるドキュメンタリーを企画していろいろとリサーチしたが、いくら調べても確固とした姿が見えて来ず、数分の短い報道番組に仕上げただけで断念した経験がある。堤防そのもののあり方もそれを進める人々のあり方もよくわからない。よくわからないのに金だけは湯水のように注ぎ込まれた。イタリアらしいと切り捨てるのは簡単すぎて気が引ける。だが、やっぱり、いかにもイタリアらしい。。



ヤギ料理天国クレタ島

ギリシャ・クレタ島のシンボルはヤギである。ヤギはヤギでもこの島だけに生息するクリクリという野生のヤギがそれだ。クリクリは家畜化される前の野生ヤギの特徴を持っている。ヤギは1万1千年ほど前にトルコ、イラク、キプロスなどで家畜化され、その2千年後にクレタ島にも家畜法が伝わった。したがって野生のクリクリは、少なくとも1万1千年以上も前の、原始的な生態を保持している野生ヤギということになる。クレタ島そのものののシンボルになっているクリクリは、その姿が絵様にされて観光業や役場の文書などでエンブレムとして用いられている。クリクリは過去に乱獲されて激減。今は狩猟はもちろん食べることも厳禁だが、家畜化されたクリクリ種以外のヤギはむろん食料となる。そしてクレタ島には家畜のヤギが多い。羊も多い。当然ヤギ&羊肉料理もよく食べられてレシピも多彩だ。また味も抜群に良い。今後機会があれば2019年9月のクレタ島体験を中心にヤギ・羊肉料理を紹介してみたいと思う。



「老人を軽侮する老人」ベッペ・グリッロ


ポピュリスト政党「五つ星運動」の創始者ベッペ・グリッロ氏が、高齢者から選挙権を取り上げろ!とわめいて、高齢者はもちろん全ての年齢層のイタリア人から総スカンを食らった。高齢者は先がないのだから国の行く末を決める選挙に参加させる必要はない。それよりも未来のある若者に選挙権を与えろ。今は18歳から資格がある投票権を16歳にまで引き下げろ、と主張したのである。老人を侮辱するグリッロ氏自身は古希を超えた男。彼自身もりっぱな老人だろう。わめき、挑発するのがグリッロ氏のスタイルだが、若者に媚びただけにしか見えない愚かな主張は嘲笑するさえバカバカしい。それにしてもグリッロ氏の追従者たちは、いつでもどこでも「わめいて」いるように見えるこの男にウンザリすることはないのだろうか。あ、それがないから追従者と呼ばれるのか。。。



見つづけているぞ、大相撲


大相撲中継はイタリアでは朝昼晩の一日3回見ることができる。ロンドンに本拠があるJSTVの衛星放送だ。朝は日本とのライブ中継で、昼は録画再放送、夜は幕内の全取り組みの仕切り部分をカットして、勝負だけをダイジェストに見せる。僕は朝の生放送を録画しておいて、暇を見て(作って)全勝負を見る。今日12日目が終わった九州場所もしかり。好調の朝乃山が負けて、どうやら白鵬の優勝が見えてきたようだが、その白鵬の土俵態度が良くない。良くないのに皆が慣れてしまったのか誰も何も言わない。辛口解説が心地よい北の富士さんでさえも。(幸い空振りにはなるものの)倒れた相手をさらに殴る仕草、鼻や口をゆがめての示威行為、立ち合い前に使ったタオルを投げ捨てる態度、賞金を振り回す下品な振る舞い、など、など。時の経過とともに彼の所作は不穏になるばかりだ。せっかく日本国籍を取得して、引退後も大相撲界に残る覚悟を示しているのに、なぜ大横綱らしい立ち居振舞いができないのだろう。どっしりと構えたり蹲踞をしている彼の姿は、絵になるほどりっぱなのに。年を重ねるごとに行儀が悪くなるのは明らかに心の問題だ。誰か彼の心を素直な軌道に乗せてやらないと、せっかくの大横綱が晩節を汚す結果にもなりかねない。そうではなくとも、引退後の活躍はおぼつかないのではないか、とファンのひとりとして心配になる。



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