フィンランドに34歳の女性宰相が誕生して話題になっている。サンナ・マリンさん。1985年生まれである。
昔、花のニッパチ組という流行語があった。大相撲の昭和28年生まれの力士たちのことだ。彼らは昭和50年代に大活躍した。
横綱になった北の湖と若乃花(2代目)をはじめ大錦、麒麟児、金城などの強い力士がいた。
2019年の34歳とは、日本暦で言えば昭和60年生まれの人たち。大相撲ふうに言えば「花のロクマル組」か。
マリン首相のほかに大相撲の白鵬、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド、ゴルフの宮里藍や横峯さくらなどが「花のロクマル組」になる。
横綱の白鵬やサッカーのロナウドは、34歳の今日現在もそれぞれの世界で最強また最高峰の地位に君臨している。
スポーツの世界では、人の寿命が伸びるのに比例して、明らかに選手寿命が伸び活動の最盛期間も伸びている。
この傾向は、カール・ルイスが30歳で100M走の世界記録を塗り替えた、1991年あたりから明らかになっていったように思う。
飽くまでも個人的な印象だが、それまでは20歳代半ばから後半が選手生命のピークで、多くの世界記録も30歳以前に樹立されていたのではないか。
ヒトの身体能力は平均寿命の延びと共に高くなって行って、その盛りや持続期間もより高齢へと移動しているのが実情のようだ。
ところが政治の世界では、高齢者が普通に現役寿命を延ばしているばかりではなく、若年層の活躍も目覚ましくなっているように見える。
高齢で現役の政治家としてはマレーシアのマハティール首相(94歳)、イタリアのベルルスコーニ元首相(83歳)などがいる。
またことし亡くなったジンバブエのムガベ前大統領は、2017年時に93歳になってもまだ現役だった。もっとも40年近くも政権を握り、後半は民主制ではなく独裁制だと指弾されたが。
日本に目を向けて見れば、中曽根康弘元首相がいる。彼は現役ではなかったものの、先日101歳で亡くなるまで政界のご意見番的存在として活躍し続けた。
一方若年の政治家は、フィンランドのサンナ・マリン首相に始まって、ここイタリアのルイジ・ディマイオ外相やオーストリアのセバスティアン・クルツ 氏などがいる。クルツ氏は2017年、31歳で首相に就任。当時世界最年少の総理大臣だった。
フランスのマクロン大統領と、再びここイタリアのレンツィ元首相も39歳の若さで政権のトップの座にすわった。後者は首相になる前、34歳でフィレンツェ市長になり、38歳でイタリア最大政党民主党の党首に選ばれた。
34歳の サンナ・マリン首相は、最年少というくくりではオーストリアのクルツ前首相やディマイオ外相などに及ばない。やはり女性であること、またフィンランドでは3人目の女性宰相である点などに大きなニュースバリューがあると言えるだろう。
折りしもジュネーブにある世界経済フォーラムが2019年の男女格差の順位を発表し、フィンランドは世界第3番目に男女格差が少ない国と規定された。それだけを見ても女性宰相が3人も輩出したのは偶然ではないのだ。
ついでに言えば日本は、153カ国のうち121位と前年から順位を落として過去最悪。女性が輝く日本、という安倍政権のキャッチフレーズが依然として画餅であることが分かる。
サンナ・マリン首相は、同性愛者の母親がパートナーと同居する家庭で育った。そのために自らをLGBTのシンボルである6色の「レインボーフラッグ」にちなんで、レインボー・ファミリーの出身だと説明するらしい。
サンナ・マリン首相の就任が大きな話題になったのは、彼女が「時代の申し子」にほかならないからだ。だがそこでもっとも重要なのは、34歳という彼女の年齢もさることながら、女性、ジェンダーギャップ、LGBTというキーワードである。
同性愛カップルの家庭で育ち、フィンランド史上最年少の、3人目の女性宰相になったサンナ・マリンさんを、既述の白鵬、ロナウド、宮里藍、横峯さくら、また醸しだす雰囲気が好ましい女優の綾瀬はるかや上戸 彩などと共に、『花のロクマル組』と呼んでみたい気がするのは僕だけだろうか。
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