イラスト白黒ぎゃ~


2020年2月25日(伊時間)現在、イタリアの新型コロナウイルス感染者数は231。死者7人。全員が高齢者で基礎疾患があった。今のところ感染は北部イタリアに集中している。大部分がミラノが州都のロンバルディア州と、ベニスが州都のヴェネト州。

ロンバルディア州の10の自治体とヴェネト州の一つの自治体は封鎖されている。封鎖とはそれらの自治体の出入り口に重武装の警察の検問が設けられて、ヒトとモノの動きを規制すること。軍隊もスタンバイしている。要するに地域限定の戒厳令、と考えれば分かりやすい。

封鎖地域内では学校や図書館を含む全ての公共施設が閉鎖され、レストランやバールなどの歓楽施設も原則ほぼ閉まる。開いているのは食料品店や薬店などの生活必需品を扱う店のみ。薬店などは逆に強制開店させられている場合がほとんど。

その状況はメディアによって逐一報道される。そのために封鎖地域に近い市町村でも静かに恐慌が起きる。僕の住まうあたりも「感染爆心地」から遠くないため、パニックになっていると言うのはまだ当たらないが、完全に穏やかでもない。

その証拠は友人知己との話の中などに出てくる恐怖感の表出の多さ。またスーパーマーケットなどの状況。

昨日、食料の買出しに出た。いつものようにわざと昼食時を選んだ。買い物客がぐんと少なくなるからだ。店の様子は普段と何も変わらなかった。ところが精肉売り場に異変が起きていた。

製品棚が空っぽなのである。店員に聞くと午前中に大勢の客が押し寄せて売り切れになったのだという。

3軒のスーパーを巡って興味深いことを発見した。3軒のうち2軒は安売り店なのだが、その2軒の品薄が激しかった。

残る1軒は普通の値段(安売りを“売り”にしていないという意味で)の店で、そこも普段に比べて品薄の印象はあったが、棚が空っぽという売り場はなかった。

それはもしかすると、貧しい人ほど不安におちいりやすい、ということの証かもしれない、とふと思った。ネガティブな世情の犠牲になりやすいのはいつも弱者だ。だから急ぎ防御の動きに出た、ということなのかもしれない。

僕は金持ちではないがひどく貧しいわけでもない。普段安売りスーパーに足を運ぶのは、もちろん値段の魅力もあるが、自分が基本的に好奇心の強い人間だからだ。

僕はTVドキュメンタリーの制作やリサーチ、またプライベートの旅などでイタリア中を巡り歩くが、どこに行っても真っ先に市場に足を運ぶ。市場を覗くのが好きなのだ。そこには地域の人々の暮らしの息吹が満ちあふれている。それを感じるのが好きなのである。

スーパーマーケットを巡り歩くのも基本的には同じ動機からだ。日常生活の場での行動だから旅行中の気持ちと純粋に同じではないが、僕を突き動かしているのは人々の暮らしへの関心であり好奇心である。

さて、

「感染爆心地」の近くに住んでいると言いながら、のんびりと状況を読んだり自己分析などをしているのは、事態が切迫していないことの証である。できればこの心のゆとりを保ったまま感染終息の声を聞きたいものだが。。


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