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2020年3月10日AM6時現在、イタリアのCovid19患者は前日より1797人増えて合計9172人に。また死者の総計は463人。

ロンバルディア州が事実上封鎖された3月8日から9日にかけては、1日の死者数が133人にも上って欧米のメディアが大きく取り上げる事態になった。

9日から今日にかけての増加数は97人。依然として死者の数は多く、死亡率も異様に高い。が、ともあれ、1日あたりの増加は133という数字よりは低くなった。133人増がピークであったことを祈りたい。

イタリアのCovid19の死者のほとんどは、これまでのところ基礎疾患のある高齢者だ。死亡者数が多いのは、イタリアが欧州随一の高齢化社会だから、という説明がなされる。

その説は今のところ、当のイタリアを含む欧州内のほぼ定説になっている。だが僕は、個人的には違和感を禁じ得ない。死者の数が余りにも多い。それは将来考察されるべき事案ではないかと思う。

高齢者を含むCovid19の患者は、封鎖・隔離されたロンバルディア州を主体に増え続けて、医療体制の崩壊さえ懸念される危機に陥っている。

国と州は退職して年金生活に入っている医師に現場復帰を呼びかけ、看護学生などを含む医療関係者やボランティアの動員も進めている。

崩壊の危機にあるロンバルディア州の医療のレベルは、英国のBBCなどが「世界レベル」と形容するのを待つまでもなく、他の欧米先進国や日本などと同様に高い。北部のほとんどの州もそうだ。もっともそれは、残念ながら、南に行くほど下がるのだが。

ロンバルディア州ほかの地域が封鎖され、イタリア全体も非常事態の体制下にありながら感染拡大が止まないのは、多くの国民が移動や外出を控えないことも大きな原因の一つだ。

イタリアで先月、真っ先に封鎖されたロンバルディア州ほかの11の自治体の住民で、警察と軍の検問をくぐり抜けて夫婦2人でスキーに行ったケースや、南部の家族を訪ね歩いたりした者などがいる。

彼らは訪問先でCovid19を発症するなどして悪行が表に出たが、その前に移動中や立ち寄り先などでウイルスをばら撒いた可能性が高い。似たような悪行で表面化していないケースも必ずあるだろうから、事態は深刻である。

社交好きで活動的な国民性もウイルスの拡散に寄与していると考えられる。老若男女がそうだが、特にたとえば男性高齢者などは、バールと呼ばれるカフェに集まってワインを飲みつつ日がな一日カード遊びに興じる。

そうでない者は広場や公園に蝟集して、政治を語り噂話に没頭する。イタリア国民は女性に限らず男も極めておしゃべりで、井戸端会議が大好きなのだ。

外出をして社交にいそしみ活発に動き回るこの国の習俗は、人に会うときに握手をしハグをしまた互いに頬にキスをする習慣などと同様に、完全に歯止めをかけるのは難しい。加えてお上や権威の命令に従うことを善しとしない民族性もあるからなおさらである。

イタリアのみならず欧州全体でも初のCovid19の犠牲者となった78歳のイタリア人男性が先月、バールでの集いの間にウイルスに感染したと見られているのも象徴的な例のひとつだ。

また封鎖の検問を逃れて他州にスキーに行った、前述の夫婦のCovid19患者もイタリア的といえばイタリア的だ。「高齢者」と報道されているその夫婦は、家でじっとしていることに耐えられずにスキーリゾートへと逃亡したのである。

ロンバルディア州が封鎖される直前に、急ぎ感染者の少ない南部の実家に逃れた人々も多い。封鎖された後も抜け道を探って移動する者が続出しているという報道もある。彼らが無自覚にウイルスを拡散していないとは言えない。

そうした無責任で利己的な行動は、何もイタリア人だけの特権ではない。人間全ての性というものだ。が、時として自制心が欠落しているのではないか、といぶかるほどに自由奔放なイタリア人的メンタリティも、Covid19危機を増長させているのではないか、と僕は恐れる。

権威や権力を嫌い、規制や規則に縛られることを善しとせず、ちゃらんぽらんにも見える明るさで活発に行動するイタリア人はすばらしい、と僕は思い、だからこの国に住まうことを愛してもいる。だが今は、彼らに息をひそめてじっとしていてほしい、と願うばかりである。


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