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イタリア時間2020年3月29(日曜日)AM8:00現在、イタリアの感染者数は92472人。死者と回復者を除いた実質の感染者は70065人。

イタリアを抜き中国も引き離して感染者数が伸び続けるアメリカの数字は124665人。一方日本の感染者は、NHKの統計で1767人。感染者は確実に増えているが、爆発的感染拡大は起きていない。

このまま漸増状態が続けば、日本は完全に健康ではないがイタリアを筆頭にする欧米の重症国とは一線を画した「病人」であり続けられるかもしれない。医療崩壊に結びつきかねない突然のオーバーシュートを回避できるなら、日本は完全な勝利者、と言ってもいいだろう。

そうなれば喜ばしいことだが、果たしてそううまくいくのか、イタリアの行く末とともに懸念は尽きない。

英国「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の感染症の専門家チームは3月26日、世界のCovid19の死者はことしだけで最悪4000万人、最低でも130万人に達する可能性があると発表した。予測とはいえ、おどろくべき数字だ。
Covid19禍が陰惨を極めるイタリア・ロンバルディア州に住む僕には、実感とまではいかないがかなりの真実味を持って胸に響く。

昨日(2020年3月28日)PM18時現在のイタリアのCovid19死亡者は、世界最大の10023名。世界全体の死亡者30857人のほぼ三分の一にもあたる。イタリアの死亡者のうちほぼ6割の5944人が僕と同じロンバルディア州の住人である。さらに言えば、ロンバルディア州の12県のうち、僕の住むブレシャ県は州内2番目に死亡者が多い。また僕の住民票がある人口1万1千の村では、これまでに68人が感染し14人が死亡。治癒した患者も24人いる。

僕の住む村は4つの集落で構成されている。僕はそのうち役場や銀行や軍警察などがある中心集落に住んでいる。今のところ村の知り合いの中に感染者はいないようだ。ただし、3年前まで僕の「かかりつけ医(ホームドクター)」だったジーノ・ファゾリ先生がCovid19で亡くなった。イタリアの医療はホーム・ドクター制度を採っていて、住民の全てには必ず1人のかかりつけ医がいる。

村から車で20分弱の距離にあるブレッシャ県の中心都市ブレッシャ市には、息子2人と多くの友人知己が住んでいる。厳しい移動規制があるため、息子2人とは今は会えない。彼ら兄弟もお互いに行き来できない状況。そんなふうだからむろん僕らは友人知己にも会えない。ただし、電話やSNSによる連絡は取りすぎるくらいに取っている。妻の携帯電話は連絡の取りすぎが原因なのかどうか故障してしまったほどだ。だが、全ての店が閉まっているため修理にも出せない。新品を買うこともままならない。

ブレッシャ市には多くの友人知己がいる。そのうちのかなりの数の人々が新型コロナウイルスに感染してしまった。死亡者も日一日と増え続けている。そうした状況を踏まえて僕は、あるいは書置きになるかもしれないというぐらいのつもりでこのブログを書いていくことにした。全世界の死者の数がことしだけで130万人から4000万人にのぼる可能性がある、という前述の英国の専門家チームの警告が、僕に心境の変化をもたらしている。

生きている限り、遺書といい死と口にするのは、あるいは大げさにすぎるかもしれない。だが身近で多くの友人知己が罹病し、住まいのあるロンバルディア州が世界一のCovid19感染地獄に陥っているなかで、ちょうど1年前に狭心症の治療を受けもはや60歳代にも突入した僕が、絶対にCovid19に襲われることはない、と考えるのはほとんど狂気のさただ。

だが、そうはいうものの、こうして記事を書きつつ僕が死の恐怖を感じているのかといえば、それはまったくない。仕事場の窓から見える田園風景は平和な静寂に満ちている。もしかすると静寂は、死のウイルスの息吹ということなのかもしれない。が、今のところは僕の心は完全に穏やかだ。それでも先行きは分からない。

手始めに、次のエントリーあたりでイタリア全土が封鎖された中での具体的な生活の様子を書いてみようと思う。イタリアの切羽詰った状況が日本に飛び火するようなことがあれば、もしかすると、このブログを読んでくれている日本の読者の皆さんの役に立つかも知れないから。むろん、飛び火しなければそれに越したことはないけれど。またそうであることを願いつつ。

イタリアの一日あたりの感染者数は4日連続で減少したあと増加に転じ、昨日はまた減少した。かねてから予測されていた通り、もしかするとやはり感染のピークが来たのかもしれない。それは朗報だ。だがもしそうなっても、実はそれはここロンバルディア州を中心とする「北イタリアのみ」の朗報かもしれない。

それというのもイタリアのウイルス禍は、たとえ北部が治まる日が来ても、中南部、特に南イタリアでの感染拡大が深く懸念されるからだ。南部イタリアの医療体制は北部に比べると十分とは言いがたい。Covid19はイタリアで最も進んだロンバルディア州の医療組織でさえ縦横に破壊した。南イタリアでさらなる感染拡大が続けば、全土を巻き込んだCovid19地獄はとどまるとところを知らずに進行する可能性がある。


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