4月1日、イタリアの新型ウイルス感染者の一日あたりの増加数が、上限に達して安定期に入った可能性が高くなった。だがあくまでも安定期なのであり、終息に向かい始めたというのはまだ全く当たらないと考えるべきだろう。
イタリアの4月1日のCovid19死亡者は727人だった。これは1日当たりの死亡者数としては3月26日以来最低の数字である。
依然として高い数字には違いないが、減少傾向にはある。死者数はここまでに入院している高齢の患者が多数いるため、残念ながらしばらくは高い数字で推移するだろう。
ここまでのイタリアの感染者の総計は110574人。全死者数:13155と回復者数:16847を引いた実質感染者数は80572人である。
感染状況が安定期に入ったらしいという国民保健局の報告を受けて、イタリア政府は外出禁止令を緩めて、親が付き添っての子供の散歩を認める、と達しを出した。するとタリア中が騒然となった。
自宅に閉じ込められて苦痛を強いられている人々の間には歓声が上がった。特に子供のいる家庭は喜んだ。学校閉鎖で自宅に詰め込まれた子供も面倒を見る親もストレスが高まっているのだ。
一方で激しい非難も沸き起こった。Covidi19被害に苦しむロンバルディア州を中心とする北部各州は、いま規制を緩めればここまでの努力が水の泡になるとして、政府の告示を「無意味で無責任、且つ狂気の沙汰」とまで呼んで激しく反発したのだ。
北部各州の抗議は健全なものだ。たとえ感染状況が真に安定期に入っているとしても、イタリアのCovid19禍の現状は依然として無残極まりないものだ。ここで厳しい移動規制に象徴される警戒措置を解くのは危険が多すぎる。
北部の州知事らの激しい糾弾にさらされたイタリア政府は、あっさりと間違いを認めた。翌日(4月1日)には早速方針を転回して、コンテ首相は全土の封鎖を4月13日まで継続する、とテレビ演説で表明した。
4月13日まで、としたことには理由がある。4月12日はキリスト教最大の祭り、復活祭(イースター)である。復活祭当日は家族や友人またゆかりの人々が集って大食事会を開く。
復活祭の食事会では子ヤギや子羊の肉が供される。ことしは恐らくそれらの肉の消費も大きく落ち込むことだろう。
新型コロナウイルスは多くの人の命を奪う代わりに、たくさんの子ヤギと子羊のそれを救うという、残虐と慈悲が交錯するドラマも演出しそうだ。
復活祭の翌日の13日は小復活祭(パスクエッタ)と呼ばれる休日。その日は多くの人々が、やはり家族や友人などと共に野山に出てピクニックを楽しむ習慣がある。
コンテ政権は祭りの両日の人の集まりを規制することで、感染拡大を防止しようと考えているのである。政府は同時に、あたかも4月14日に全土の封鎖が解除されるかのようなもの言いをしているが、今の状況では規制はその後も継続される、と見るのが妥当だろう。
いずれにしてもイタリアの封鎖・隔離策は、状況を確認しながら最長7月いっぱいまで継続される、と以前から決められている。それはつまり、7月以前の全面解除もある代わりに、期限の後も規制が続く可能性がある、ということなのである。