全土のロックダウン(封鎖)が4週間目に入って初の週末。イタリアは新型コロンナウイルスとの凄惨な戦いを続けながら、かすかな希望の光を見出しては自らを鼓舞しようとしている。
4月4日の土曜日にもそれは見つかった。イタリア全国の集中治療室患者数が、前日の金曜日の4068人から74人減って3994人になったのだ。
Covid19パニックが始まって以来、初の減少である。
同じ日の死亡者は681人。感染者数も2886人増えた。一日あたりの死亡者数も、感染者数も“いつものように”相変わらず高い。死亡者の総計は15362人となって依然として世界最悪だ。
集中治療患者が減少したのは朗報だが、一日あたりの感染者数がマイナスに転じない限り本当の福音とは言えないのではないか。
解放された集中治療室の74床のうち55床は、僕の住むここロンバルディア州のものである。今も世界最悪のCovid19被害地と呼んで構わないだろう同州では、日々の感染者も恒常的に増え続け、死亡者も昨日だけで345人に及んだ。トンネルの向こうの光はまだ見えない。
ロンバルディア州にある僕の住む村の窮状も改善していない。4月5日現在、人口1万1千人のうち91人が感染し、19人が死亡。回復した患者30人。隣町の県都ブレシヤ市の被害状況も相変わらず悲惨で、僕らの友人知己の家族だけでも死亡者は10人を超える。
なお、先日来ここで言及している集団感染現場、エリート族のパーティー関連では、宴会を主催した76歳の男性を含む4人が亡くなり、入院した者と自宅監禁者のほとんどは無事回復した。パーティーの規模は70~80人程度だったらしい。
ここロンバルディア州を筆頭にイタリア全土が惨劇の只中にある。ところが週末になって、厳しい封鎖規制にあえぐ人々の不満と忍耐が破裂。ルールを無視して外出をする者が国中に溢れた。最も厳しい状況にあるロンバルディア州においてさえ。
これが独裁国家中国と民主主義国家イタリアの違いである。民主主義国家では住民を力で自宅に監禁することはできない。刑罰や罰金には限界がある。住民の意識改革のみが死神ウイルスを駆逐する力を持つ。だが道のりは平坦ではない。
感染者の数が世界最悪の312076人となったアメリカ、前日から感染者が6969人増えて総数がついにイタリアを上回ってしまったスペイン、続いて中国の上を行くドイツ、フランスなど、欧米各国の苦境は日毎に募るばかりだ。
Covid19との壮絶な戦いを繰り広げる民主主義国家の全てが、最初に被害を蒙ったイタリアのやり方を真似てロックダウン(全土封鎖)を行っている。それは実は中国が武漢で採用した戦法だ。大きな違いは前述のように、中国が人権無視の抑圧策を何の問題もなく取れるのに対して、民主主義体勢の欧米諸国はそれができない。
先を行くイタリアの形勢は、これも既述のように良く言えば一進一退、悪く言えば民度の低い住民が、多くの人々の努力を台無しにするような行動をやめない体たらく。全く予断を許さない。死神ウイルスとの戦いは、どうやら民主主義と愚民との戦いの様相を帯びてきた。もしかすると真に怖いのは新型コロナではなく、民主主義国内にうごめくそれらの愚民であるのかもしれない。
そしてこうして書きつつ、日本の現況を見れば、ここ欧州の愚民に匹敵する不埒な輩は、国民を守るために大胆迅速な決定を出して新型ウイルスに対抗しようとしない、政府の中にいるように見える。事ここに至っては、国民を守るとは経済を守ることではなく、国民の健康を守ることなのに。。