看護師顔切り取り


欧州に遅れてコロナ危機が始まった南北アメリカや中東の感染拡大が続く中、いったん落ち着いていたヨーロッパにも再び状況悪化の兆しが見えてきた。

第1波で過酷な試練を体験した西ヨーロッパでは、主にスペイン、フランス、ドイツなどにクラスターの発生や感染増加が顕著になっている。

第1波で最も悲惨なコロナ危機を体験したイタリアは、世界一峻烈とされたロックダウンを導入した効果もあって、今のところは欧州の中でも感染拡大が少ない。

だが、そうはいうものの、イタリアでも新規の感染者はコンスタントに出ていて、いつ状態が悪化してもおかしくない環境である。

欧州の感染者の増加は、夏のバカンスを楽しむ人々の動きと関連している。厳しい移動制限に象徴されるロックダウンが終わったことを受けて、多くの人々が観光地やリゾートに移動を始めた。

コロナ危機の中でも、いやむしろコロナ危機だからこそ、バカンスで開放感を味わいたいと考える人々がいて、彼らが移動を開始したとたんに感染拡大が始まった。

コロナウイルスは自らでは動かず、飛ばず、移動しない。常に人とともに動き人によって運ばれ、拡散し、宿りを増やしていく。だからこそ人は人との接触に細心の注意を払わなければならない。

その注意が時として若者には足りない。彼らは感染防止策に無頓着である場合が少なくない。感染拡大は全ての年齢層の人々によってなされるものの、圧倒的に若者によるケースが多い。

若者は、コロナに感染しても重症化する可能性が低い。死亡する可能性は、高齢者と違ってもっと低い。そこから感染防止策を軽視する心理が芽生え、それは彼らの行動に出る。

彼らはこう考えている「俺たちは大丈夫。コロナは老人の問題だ」と。そして夜の繁華街やリゾートの街やビーチで、コロナなどどこ吹く風で思いのままに集い歓楽する。

そこで新型コロナに感染して無症状のまま再び思いのままに動き移動し活動して、他者にウイルスを受け渡していく。彼らが高齢者へ移すことを腹から気に病むことはほんどない。

祖父母など肉親に高齢の者がいれば少しは気にすることもあるだろうが、それとて長く緊張を維持したり気を配ったりする理由にはならない。彼らはいつも自身のみずみずしい生を目いっぱい謳歌することに懸命だ。それが若さというものである。

若者の大多数が自主的に感染対策にまい進すると考えるのは愚かだ。彼らはコロナが若者も「殺す」形に変異でもしない限り、感染対策を完璧に遂行することはない。感染拡大防止の最大の障害は若者なのである。

若者ではない人々はそのことに薄々気づき始めている。若者も気づいているが彼らの命にかかわることではないので高をくくっている。若者と高齢者間の分断が始まろうとしている。もしかするともう始まったのかもしれない。

日本ではここ最近、コロナに感染しても症状が軽いかあるいは全く出ない、比較的若い年代の人々の集団感染が発生しているようだ。実は欧州でも感染者の年齢層が下がっている。

特にスペインとフランスまたドイツで、休暇を楽しむ若者が都会やリゾート地で深夜に集まって騒いでは、感染する事態が頻発している。その後彼らはそれぞれの家庭に戻って高齢者を感染させる。

そうした事態を受けて、スペインのカタルーニャ州はついに7月25日、ナイトクラブや深夜営業のバーを再び2週間ほど閉鎖すると発表した。その動きは欧州各国に伝播しそうな雲行きである。

ウイルスが変異し、若者を重症化させ、最悪の場合は死亡させるようにならなくても、彼らの行動パターンが変化する可能性はある。

爆発的な感染拡大が起きて、再びロックダウン(あるいは日本なら緊急事態宣言)が導入されることだ。そこでは経済が滞り雇用危機が発生して、彼らも恐慌の中に投げ出される。

そうなれば無鉄砲な者たちも少しは反省するだろう。だがそれでは遅すぎる可能性がある。破壊された経済が元に戻るのは至難だ。彼らはその前に感染防止に真剣に取り組んだほうがいい。

若者をそういう方向に導くのは、若者ではない大人たちの役割である。とりわけ政治の責任だ。欧州はその方向に動きつつあるようだ。だが日本の政治は、行動を起こすどころか、問題の核心にさえ気づいていないように見える。

ところで活動的で行動範囲も広い若者がコロナに感染しても症状が出ないのは、全くの偶然なのだろうか?無症状なので彼らは感染しても活発な動きを止めず、さらに感染が拡大する。

もしもそれが仕組まれた作戦だとするなら、なんと怖いことだろう。そしてなんという深い知恵だろう。深い知恵はもしかすると高齢者のみを殺す、とも決めているのかもしれない。なぜ?地球上に高齢者が増えすぎたから?

新型コロナの凄みは、知恵があるようにも見えることである。もしかするとワクチンも治療薬もなにもかも無効にする知恵まで秘めているのでは?とさえ思わせる。むろん人間はそれ以上の知恵を持つと信じてはいる。が、時として新型コロナは、その信頼を揺るがすほどの殺気さえ見せるところが忌まわしい。



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