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英仏スペインを筆頭に進んできた欧州の新型コロナ感染拡大の第2波が、どうやらこれまで極めて静かだったイタリアも飲み込みこんでさらに勢いを増しつつあるようだ。

10月初めのイタリアの一日当たりの新型コロナ感染者数は2000人台だった。当時はそれは驚くほど大きな数字に見えた。ロックダウン解除後、イタリアの新規感染は低い水準で推移していたからだ。

ところがその数字は感染が急増していたスペイン、フランス、イギリスなどに比べると、とても低い水準に過ぎなかった。だがその後イタリアの感染者数は、3国をなぞるようにじわじわと増え続けた。

そして10月16日、ついにイタリアの一日当たりの感染者数は1万人を超えた。翌日も増えて1万925人が新たに感染した。また累計の感染者数も節目の40万人を超えた。

18日は日曜日にもかかわらず感染者数はまた増えて1万1705人に達した。週末は欧州のほとんどの国と同じようにイタリアの検査数も少なくなる。それでも新規の感染者数は減らなかった。

だが第2波が猛威を振るっているフランスでは、イタリアの感染者数が1万人に達する前の10月15日に、一日の感染者数が3万人を超えた。それを受けてフランス政府は、首都パリを含む9都市に夜間外出禁止令を発動した。

パリの街の灯がまた消えた。マルセイユ、リヨン、グルノーブル、 サン・テティエンヌなどの街の夜も漆黒に閉ざされる。規制期間は4週間。だが状況によっては延長されることが決まっている。

スペインとイギリスの感染拡大も続いている。10月15日、イギリスの感染者は1万8980人を数えた。スペインの毎日の新規感染者数も極めて多い。優等生のドイツでさえ間もなく1万人に迫る勢いである。

各国は感染拡大に伴ってさまざまな規制をかけ始めている。飲食店などの営業時間が短縮されバーやパブなどでの立ち飲みも制限される。ロンドン市内にある3600余のパブの多くは、今後の展開によっては倒産閉鎖に追い込まれる可能性がある。

またスペインのカタルーニャ州では、バーやレストランの営業が大幅に制限されテイクアウトのみが可能となる。さらにジムや文化施設またショッピングセンターや各種店舗では、それぞれ定員の50%まで、あるいは30%まで、と収容人数が制限される。

一方オランダでは、全てのバーやレストラン、カフェなどの店内営業が全面禁止。テイクアウトのみが許されることになった。さらに人々が各家に招待できる客の数は1日に3人までに制約される。

国民の辛苦を尻目にオランダ王室の家族はギリシャに休暇に出向いた。当然国民から強い怒りの声が沸き起こった。そのため愚か者の王室のメンバーがあわてて休暇を切り上げる、というハプニングもあった。

その他の欧州の国々、たとえばチェコ、ベルギー、ポルトガル、またポーランドなどの感染拡大も急速に進んでいる。第2波はもはや誰にも否定できない。

ここイタリアではさらに、一日の感染者数が1万1705人に膨れ上がった10月18日以降は、各市町村長が、地域の広場や道路を含む公共の場所を夜9時をもって閉鎖できる、とする政府の決定が告示された。

同時にバーやカフェなどの営業は、午後6時以降はテーブル席のみに制限され、各席の人数は最大6人まで、とも決められた。レストランの営業もそれに準じる。また公共交通機関の混雑を避けるために、各学校に時差登校を要請するなどした。

イタリアでは長く厳しい全土封鎖措置を導入したことが功を奏して、夏の間は感染が押さえ込まれてきた。日毎の死者数も3月から4月のピーク時の900人超から激減した。だが感染拡大はじわじわと進行しつづけた。

イタリアは最近、残念ながら第1波の過酷な犠牲によって獲得した感染抑制の「貯金」を使い果たしつつあるように見える。だが人々の中にしっかりと留まっている恐怖心が感染拡大を堰き止めるだろう。

たとえ思い通りに感染を抑制できなくても、3月~4月の感染爆発とそれに伴う医療崩壊への怖れ、と同時に最終的にはそれを克服した自信が相まって、イタリアは危機を上手く切り抜けるだろう。

切り抜けると信じたい。


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