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2020年12月27日早朝、いつものように書斎兼仕事場の机の前に座ってネットにアクセスした。するとそこかしこのサイトに「日本、全世界からの外国人入国を拒否」「Japan bans new entries of foreigners」という類いの見出しが踊っていてびっくりした。

新型コロナウイルスの変異種に感染した人が国内で見つかったことを受けて、28日から来月末まで、全世界からの外国人の新たな入国を拒否する、のだという。

BBCやロイターやCNNなどの大手を筆頭に、外国メディアが特に大きく伝えている。

ところが衛星放送で見るNHKニュースはそのことを取り上げていない。ようやくNHKネットで扱っているだけである。

ためしに朝日新聞を見た。やはりニュースになっていない。そこで見出しの一覧を一日前までたどって探したが、表記されていなかった。

つまりそのニュースは、日本国内では重要とは見なされていないのである。だから大手メディアを中心に扱いが極小になるか、扱ってもすぐに消えている。

ところが世界では、日本のような先進国が、いとも簡単に「全世界からの訪問者をシャットアウト」するなどというのは、一大事なのである。だから外国メディアは騒いでいるのだ。

世界の多くの国々は、変異種のウイルスがはびこっている英国からの訪問者を拒否している。英国からのウイルスに染まりかけているいくつかの国からの訪問者も拒絶している。

それは理解できることだし正しい動きのように見える。

だが、数人の感染者が見つかったからといって、突然世界中からの入国者を一斉に拒絶する、というのはどう考えても異様だ。

日本政府の施策は特にコロナ関連では混乱しっぱなしだ。つい最近も絶対に見直さないと言い続けていたGoToトラベルを突然やめた。その前には「勝負の3週間」でコケた。

パンデミックのしょっぱなでは、中国に遠慮すると同時に彼の国からの観光客が落とす金に目がくらんで、今とは逆に中国人を受け入れ続けて感染拡大を招いた。

その後も安倍前政権の失策は続いた。前政権を受け継いだ菅内閣は、安倍さんの失策癖まですっかり継承したようだ。

いや、突然の「全世界からの外国人入国者を拒否」の如く、右から左、極端から極端へとぶれる政策を見ていると、前政権よりもアブナっかしい。

菅首相と幹部は「全世界からの訪問者を拒否」という施策が、いかに重いものであるかを理解していないように見える。

理解していないから重大な施策をいとも簡単に導入してたじろがない。そこにプリンシプルの欠如という誤謬が重なるから、政策が大ぶれにぶれる。

だが「全世界からの訪問者を拒否」ということの意味を理解していないのは政府ばかりではない。実はメディアも全く理解していない。だからそれを軽く見て大きなニュースにはしないのだ。

一国の政府やメディアは国民の鏡である。それらは先ず国民がいてその後に存在する。政府やメディアがある事柄を理解しないのは、国民が理解していないからである。

そうやって国民と政府とメディアによる、巨大な無知また無関心が形成される。

日本は12月28日から1月末まで江戸時代以来の鎖国体制に入る。

そのことの重みもさることながら、そういう施策を何のためらいもなく導入してしまえるメンタリティーの軽さが、面白くもあり、怖いといえば怖いようでもある。


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