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イタリア下院では18日、コンテ内閣の信任投票が行われた。レンツィ元首相が主導する小政党「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」が連立政権から離脱したのが混乱の原因。

下院では賛成321、反対259で内閣は信任された。だが19日の上院では絶対多数を獲得しての信任は厳しい見通し。

イタリアでは一方的に連立政権を離脱したレンツィ元首相への反感とともに、中国寄りの反体制政党「五つ星運動」に親和的なコンテ首相への不信感も少なからずある。

上院議員のうちには、昨年の新型コロナ第1波の危機を乗り切ったコンテ首相を賞賛しつつも、中国と親しい左派ポピュリストを頼る姿勢を善しとせずに反対票を投じる者も出ると見られている。

政治アナリストによる分析等では、上院で絶対多数に届かなくてもコンテ内閣の信任投票は可決される可能性が高い。

「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」所属の上院議員は、信任投票では棄権に回る方針。そのため他の欠席議員数などを含めれば、絶対多数よりは少ない単純多数には届くと見られる。

単純多数で信任された場合、コンテ首相は「少数与党政権」を率いることになる。その形はイタリアでは珍しくない。が、新型コロナパンデミックの中では異様に厳しい政権運営になることが確実だ。

なぜならイタリアでは、予算案などの重要法案は絶対多数での可決が法律で義務付けられている。それらの可決の度に絶対多数工作をしなければならないのは政権にとって大きな苦痛だ。

上下両院が同等の力を持つイタリアの政治システムではなおさら厳しい。コンテ内閣を「壊し」つつあるレンツィ元首相は2016年、上院の力を削ぐか否かの国民投票に敗れて下野した。

レンツィ元首相は上院の権限を縮小することを強く主張した。上院の力を大幅に弱めることには、当の上院議員以外の全てのイタリア人が賛成している、と言われるほどそのシステムは長く問題視されてきた。

レンツィ元首相は真っ当な考えを推し進めながら当時大きな間違いを犯した。いつもの唯我独尊体質のために自らを過信し、「私を取るか、否か」という言い方で国民投票のキャンペーンを張って、思いきりコケた

思い上がったキャンペーンの文句に国民は反発し、彼に対抗する政治勢力は国民の憤懣をうまく利用して、国民投票をあたかも「レンツィ信任投票」のように仕向けた。

そうやって必ず卑小化されると見えた上院は強権体質のまま存続し、レンツィ首相は辞任した。レンツィ首相は上院改革に失敗したことと連立政権から離脱したことで、コンテ首相を2重に貶めていると見ることもできる。

コンテ首相が拠って立つ「五つ星運動」は、現金バラまき策のベーシックインカム制をゴリ押し成立させたり、中国との連帯を強く主張するなど、過激左派的な不穏な勢力だ。従って僕は彼らを支持しない。

だが今は、パンデミックが猖獗を極めている非常事態だ。そんな時に我欲に目がくらんで政権を瓦解させようとするレンツィ元首相一派の動きは言語道断だ。

コロナ危機のただ中でイタリアが政治不安に陥るようなら―それがイタリアのお家芸とはいうものの―レンツィ元首相は、議会議事堂の襲撃教唆で「万死に値する」ほどの不名誉にまみれて退任するトランプ大統領と同じ不覚人である。



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