108歳のイタリア人女性、ファティマ・ネグリーニさんは昨年新型コロナに感染したが、奇跡的に回復した。
死の淵から生還した時、ファティマさんは「神様はどうやら私を呼び寄せるのを忘れたようだ」とジョークを飛ばして医師や看護師らのスタッフを笑わせ、それはメデァアで大きく伝えられた。
イタリアでは2021年2月1日現在、 8万8千人以上の人々が新型コロナで亡くなり、その多くは80歳以上の高齢者である。
そのために新型コロナから回復したお年寄りには注目が集まる。
欧州全体でもその傾向は強い。
例えばイタリアよりも新型コロナの犠牲者が多い英国は、世界で最も早く新型コロナワクチンの接種を始める際、最初の患者として90歳の女性を選んで話題になった。
英国ではその後も94歳と99歳のエリザベス女王夫妻がワクチン接種を受けてニュースになった。
普通ならそんな事案がメディアをにぎわすことはない。ニュースバリューのある話題ではなく、且つ個人情報の争点にもなりかねないからだ。
だがそのトピックは、おそらく女王夫妻の了解も得て、ニュースに仕立てあげられた。
そこにはできるだけ多くの人にワクチンを受けるように促す宣伝の意味合いが込められている。
世界にはワクチン接種を嫌い、科学を疑う人々が少なからず存在している。
ここイタリアでは2020年12月27日にコロナワクチンの接種が始まり、2021年1月月31日現在、195万8千691回分が接種された。
新型コロナを克服した冒頭のファティマ・ネグリーニさんも、1月18日にワクチンの接種を受け、そのことも再びニュースになった。
イタリアのワクチン接種件数は欧州では英国に次いで多い。だがその数字は当初の計画に比べると遅れている。
製造元の欧州での生産が追いつかないというのが理由だが、説明に少々不明瞭な部分もあって、EU(欧州連合)と製薬会社が対立している。
コロナワクチンは医療関係者に優先的に接種され、次に感染すると重症化しやすい高齢者に接種される。
ことし6月に109歳の誕生日を迎えるファティマ・ネグリーニさんは、むろん高齢者として優先的に接種を受けた。
同時に、ワクチン接種者としては世界最高齢とも見られるその年齢によって、イタリア中に明るい話題を振りまいている。
それはさておき、
日本政府のワクチン接種戦略の迷走ぶりは目もあてられない。
いくつかの製薬会社とワクチン購入契約を結んだというが、中身はどうなっているのだろうか。
昨年からワクチンの供給を受けはじめているEU(欧州連合)でさえ、購入契約をめぐって製薬会社ともめている。
コロナ対策すらもしっかり行えない管政権が、生き馬の目を抜く世界のワクチン獲得ゲームで勝てるとはとうてい思えない。
いつから、誰に、どのようにワクチン接種を開始するかも不明瞭なら、ワクチンの入手そのものでさえ覚束ないように見える。
最短で2月の末に初のワクチン接種が行われたたとしても、EU(欧州連合)に2ヶ月以上も遅れてのスタート。
世界で初めて新型コロナワクチンの接種を始めたイギリスに比較すると、ほぼ3ヶ月もの遅れになる。
日本はワクチン接種戦略で大きく失敗して、その結果経済で欧米ほかの国々に太刀打ちできなくなる、という懸念が世界のそこかしこで出始めている。
そんな折に菅首相は、国会質疑で議員の批判を受けて「失礼だ。一生懸命仕事をしている」などと子供にも劣る愚かな答弁をした。
日本最強の権力者、という願ってもない地位をタナボタで得た彼は、その僥倖に深く感謝して謙虚になるどころか、権力を笠に着て居丈高になっている。
何おか言わんや、である。
民主主義の底の浅い日本の権力者は、お上に無批判に頭を垂れる国民が多いことに乗じて、自らが国民の下僕であることも忘れてすぐに増長しがちだ。
管首相の「失礼だ」発言はそのことを端的に示している。
国民への真摯な語りかけもコロナ対策も不得手な彼は、国民に「失礼」だ。さっさと退場してもらうほうがよほど国益にかなうのではないか。