マタレッラ大統領の指示で連立交渉をしていたロベルト・フィーコ、イタリア下院議長の工作が行き詰まった。大統領は下院議長の報告を受けて今日(2月3日)、マリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁を大統領府に招き会談する。大統領はドラギ氏に組閣要請をする可能性が高い。
実現すればイタリアお家芸のテクノクラート(実務者)内閣の誕生となる。同時にそれはイタリア政界の「壊し屋」レンツィ元首相の勝利とも言える。レンツィ元首相はコロナパンデミックでイタリアが呻吟する中、自らも所属するコンテ政権を崩壊させて政治危機を招いた。
レンツィ元首相はその上で第3次コンテ内閣の成立を阻み、自身が推すマリオ・ドラギ氏を首班とする政権の樹立に成功しそうな勢い。マタレッラ大統領とレンツィ元首相は近い。2人はひそかに連絡を取り合ったと推測できる。
魑魅魍魎が暗躍するイタリア政界は、パンデミックに苦しむ国民をそっちのけでパワーゲームにまい進した。結果、魑魅魍魎中の最悪人・レンツィ元首相が勝利しそうだ。
レンツィ氏が勝った場合のわずかな安らぎは、極左ポピュリスト五つ星運動の影響が、おそらくかなり削がれるであろうことである。
ドラギ内閣が誕生しなければ、総選挙になる可能性もある。総選挙になれば、コロナ禍の中でのさらなる混乱と酸鼻が必至。レンツィ元首相はどう責任を取るのだろうか。
日本語の「万死に値する(中国語源)」とは、一度だけではなく何度も死んでも(殺しても)償えないほどに罪が重い、という恐ろしい表現である。
事態がどこに落ち着こうとも、レンツィ元首相にはその言葉を彼の陰惨な権謀術数への贈り物として捧げたい。