伊ウク国旗650

新聞、テレビ、ネットをはじめとするとするありとあらゆるメディアが、昼も夜もそして真夜中でさえも、ウクライナにおけるプーチン・ロシアの蛮行をこれでもかとばかりに伝え続けている。

戦争は世界中で一日の休みもなく行われている。だが情報開示が当たり前に展開されている欧州で、実戦が進行するのはきわめて異例のことだ。

欧州は紛争や対立を軍事力で解決するのが当たり前だった野蛮且つ長い血みどろの歴史を経て、それを話し合いと外交で解決しようとする、開かれ教化された進歩的民主主義の道を確立した.

片やロシアは、未だそこに至らない未開国であることが明らかになった

情報を隠し、歪め、虚偽を垂れ流すプーチン・ロシアは欧州の一部ではない。それはアジアである

ここで言うアジアとは、民主主義を理解しない中国的、アラブ的、日本右翼的勢力の全てだ。つまり未開で野蛮で凶悪なアジア的精神。

敢えて日本のみに目を向ければ、残虐でどう猛で卑怯な戦闘集団だった旧日本軍と軍国主義日本の過去を直視しようとせずに、むしろそれを隠蔽し否定し都合のよい情報のみを言い立てて、歴史を修正しようとするネトウヨ系排外差別主義勢力のことだ。

自由と民主主義を死守する西側世界は、アジアに属するロシアとは全く逆の社会状況にある。そこでは横暴と欺瞞と悪意に支配されたプーチン・ロシアの情報操作の実態が、あらゆる角度から暴かれている。

欧州の全ての国は、ウクライナ危機が自国にとって対岸の火事ではないことを実感している。ウクライナが陸続きで地理的に近く、且つ欧州の過去の血みどろの大戦や闘争の記憶が人々に共有されているからだ。

そして何よりもロシアのプーチン大統領が、民主主義の精神とはかけ離れた独善と悪意と暴力にまみれた異様な指導者であることが再確認されたからだ。

ロシア包囲網に断固とした意志で参加しているイタリアは、歴史的にロシアと親和的な関係を築いてきた。イタリアが長く欧州最大の共産党を有してきたからだ。同じ動機でイタリアは中国とも親しい

それはだが近代史における政治ゲームに過ぎない。独立心旺盛で自由な都市国家が統一国家イタリア共和国の真髄である。イタリアの核心は政治ゲームの主体ではなく、それらの都市国家がもたらす多様性なのである。

国家構成の基底に多様性が居座っているイタリアは、対外的にも多様で実践的な政治体制を維持している。敢えてひとことで分かり易くいえば、イタリアは世界中のあらゆる国と親和的なのである。少なくともその意志を秘めて世界に対しているのがイタリア共和国だ。

それは八方美人とか日和見主義を意味するのではない。自立志向の強い都市国家群を統一国家内に含む場合の必然の帰結である。言葉を変えれば中央政府は、国内にある多種多様な意見や意思を絶えず尊重し耳を傾け続けなければならない。

そのスタンスは対外的にも増幅されてイタリア共和国の立ち位置を規定していく。つまりそこでも多様性を重視する姿勢になる。イタリアは歴史的にもまた思想的にも、誰とでも共存しなければならない性根を持っている。あるいは誰とでも親和的でなければならない性根に縛られている。

イタリアとロシアは、地理的には遠い間柄ながらも、歴史的に良好な関係を保ち続けてきた。専門家の中にはその状況を指して「イタリアは欧州におけるロシアのもっとも親しい国である」と断定する者さえいる。

イタリアはプーチン大統領自身とも友好的な関係にある。その善し悪しは別にして、現代イタリア最大の政治的存在であるベルルスコーニ元首相は、プーチン大統領とは親友同士とさえ呼べる仲である。

86歳の元首相は2022年3月19日、性懲りもなく53歳年下の女性と3回目の結婚式を挙げた。彼の友人のプーチン大統領は、ウクライナへの暴力行使で忙しくしていなければ、あるいは結婚式に出席していたかもしれない。

また極右政党「同盟」と「イタリアの同胞」のサルヴィーニ、メローニの両党首は、相変わらずプーチン大統領を賞賛して止まない。イタリア中がプーチン大統領の残虐な戦争に怒りをあらわにしているため、彼らも戦争反対と口では言っている。だが本心は相変わらずプーチン万歳というところだろう。

ポピュリストの彼らは時勢が右といえばそれに追随し、左といえばそれに媚びる。節操もなく信義もなく核もない。あるのは粗暴で抑圧的な感情と怒りだ

そして極右の2政党とベルルスコーニ党が手を組んで選挙に臨めば、イタリアは世論調査の数字上は、明日にでも彼らに統治されることがほぼ確実な情勢だ。

だがそれらプーチン愛好家の人々の願いも空しく、イタリア政府は今のところはNATOまたEUとぴたりと歩調を合わせてロシアに歯向かっている。そしてロシアは、イタリアを敵性国家と規定しエネルギー供給を止める、などと脅してさえいる。

イタリアはエネルギー源であるガスの90%を国外から輸入している。そして総輸入の45%がロシア産である。イタリアはEU加盟国の中では、ガスの5割以上をロシアから購入しているドイツに次いでロシアへの依存度が高い。

2014年~15年のクリミア危機では、イタリアの当時のレンツィ政権は、ロシアと関係が深い国内のエネルギー業界の抵抗に遭って、ロシアに対して強硬措置が取れなかった。ドイツも同じ状況だった。

だが両国は、今回のロシアの蛮行に際しては揃って立ち上がり、他の国々と歩調をあわせてロシアに対峙している。

イタリアが速やかに行動できたのは、ドラギ政権の力によるところが大きい。

2021年に政権を握ったマリオ・ドラギ首相は、ほぼ全ての政党が一致団結して政権を支持している事実と、首相自身の求心力の強さを背景にEUにぴたりと寄り添い、対ロシアへの強硬路線を取っている。

イタリアはロシアがウクライナに侵攻して間もなく、11千万ユーロをウクライナ政府に提供すると表明した。またNATOには、今後2年間であらたに17400万ユーロの貢献をすることも決めた。同時にウクライナ難民には難民申請を出さなくてもイタリア滞在が可能になる措置を取っている。

さらにイタリアは、ひとまず合計約5000人の兵士をウクライナ周辺国へ送る決定も下した。ハンガリーとルーマニアにはそのうちの3500人が派遣される。ルーマニアでは同国の空軍をイタリア空軍が指導しサポートする。

加えてイタリアは、ウクライナ危機を国家非常事態宣言下に置くことも決めた。それによって政府はコロナ禍中と同様に、緊急の規制や法律を国会の承認を得ることなく施行することが可能になる。

イタリアを含む欧州は、静かにだが断固とした意志で、プーチン独裁政権に対抗して臨戦態勢に入っていると形容しても過言ではない。