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ロシアがウクライナに侵攻して1月以上がたった。戦争は世界中で常に起きている。だが情報開示が進んだ欧州で実戦が出現するのは極めて異例だ。
 欧州は紛争や対立を軍事力で解決するのが当たり前だった、長い血みどろの歴史を経て、話し合いと外交でそれを解決しようとする開かれた民主主義の道を確立した。片やロシアは、いまだそこに至らない未開国であることが明らかになった。情報を隠蔽(いんぺい)し、ゆがめ、意図的に虚偽の消息を拡散するばかりでなく、主権国家に土足で踏み込む蛮行に及んだ。
 欧州各国は、ウクライナ危機が自国にとって対岸の火事ではないことを実感している。ウクライナが陸続きで地理的に近く、かつ欧州の過去の凄惨(せいさん)な殺し合いや大戦の記憶を誰もが共有しているからだ。そして何よりもプーチン大統領が、民主主義の精神とはかけ離れた独善と悪意と暴力志向の強い、異様な指導者であることが再確認されたからだ。
 一貫して西洋の開明と知性の根幹を形成する国の一つであり続けているイタリアは、ロシアがウクライナに侵攻するとすぐに、約400億円をウクライナとNATO(北大西洋条約機構)に献金し、5千人弱の兵士をウクライナ周辺国へ送る決定も下した。加えてウクライナ危機を国家非常事態宣言下に置くことも決めた。それによって政府はコロナ禍中と同様に、緊急の規制や法律を国会の承認を得ることなく施行することが可能になる。
 NATOとEU(欧州連合)の加盟国の全ては、国力に応じてそれぞれがイタリアと同じ役割分担を引き受けている。欧州は自由と民主主義の名において、静かにだが断固とした意志で、プーチン・ロシアに対抗し臨戦態勢に入っている、と形容しても過言ではない。




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