corriere掲載写真650

ウクライナのブチャでロシア軍が行ったらしい大規模虐殺が明らかになった。

それを示す衝撃的な絵の数々は、あるいはプーチン大統領の運命を決定付けた可能性がある。

敢えて言えばその運命とは、彼は死なない限りもう救われない、ということではないかと思う。

プーチン大統領の異様な性状については先に言及したが、あまりにも深刻な状況に見えるので、重ねてここにも記しておきたい。

プーチン大統領はヒトラーではない。彼はユダヤ人ほかの抹殺を目指したホロコーストは「まだ」引き起こしていない。

子供たちを含むウクライナの人民を虐殺し、政敵を弾圧し謀殺し、情報操作によってロシア国民を欺き、世界に殴りかかっているだけだ。

そしてそれらの悪逆無道な行為の数々を以ってしても、あるいは彼の悪はヒトラーの悪を上回ることはないのかもしれない。

だがプーチン大統領は、「ヒトラーを凌駕する魔物」とも規定されるべき、不吉な性根を秘めてそこに存在している。

不吉さは彼がヒトラーを知っている事実から来る。

ヒトラー自身はヒトラーを知らなかった。ヒトラーはまだ歴史ではなかったからだ。一方プーチン大統領は、ヒトラーという歴史を知っている。

それは彼が、「ウクライナを侵略した大きな動機の一つは、ウクライナからナチス勢力を排除すること」と、明確に主張している点からも明らかだ。

ユダヤ人であるゼレンスキー大統領と、彼の同調者がナチスとは恐るべき詭弁である。だが血肉の全てが、嘘で固められたスパイ仕様になっているらしいプーチン大統領にとっては、飽くまでもその欺瞞が真実なのだろう。

とにもかくにもプーチン大統領は、ヒトラーの悪魔性を知悉した上で、なおかつヒトラーを髣髴とさせる暴虐に突き進んだ。

それは極めて危険な兆候だ。

ウクライナに軍を進めるまでのプーチン大統領を、世界はまともな心情と哲学と知性を備えた強い指導者とみなしてきた。

自由主義世界は、彼の一風変わった政治スタイルを、強権主義的風潮が割と普通な、ロシアという「普通ではない」国のリーダーゆえの奇矯、と捉えていわば見て見ぬ振りをしてき

その姿勢は、プーチン大統領が基本的には自由や寛容や、そしておそらく民主主義でさえ支持しているだろう、という根拠のない性善説によって担保された。

だがプーチン大統領は、自由と民主主義と開明を空気のごとく当たり前に謳歌してきた、欧米と日本を含む西側世界全体の思い込みをあっさりと踏みにじった。

彼はわれわれが性善説に当てはめて、2022年2月24日までナイーブに思い描いてきたプーチン・ロシア大統領ではない。、

彼は常人のわれわれの世界の向こう側にいる、ヒトラーと同類の得体の知れない何者かなのである。

われわれはそのことをしっかりと認識しつつ、今後のウクライナ情勢とそれに影響また規定されていくであろう、世界のあり方を見つめ続けるべきだ。





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