ロシアのウクライナ侵攻からほぼ80日が経った5月14日、ウクライナ諜報機関のボス、キリロ・ブダノフ准将が、ロシアでプーチン大統領を引きずりおろすクーデターが進行している、と英スカイニュースで公言した。

だがその後は何事もなく時間が過ぎた。真相は闇の中だが、ロシアの反プーチン勢力がクーデターを繰り返し画策していても不思議ではない。

プーチン大統領の暗殺を目指して動くスパイや、特務機関の存在もしきりに取りざたされている。

そうした権謀術数は、しかし、今のところは成功の確率は非常に低い。限りなくゼロに近いと言っても構わないのではないか。

そうはいうものの、劇画やスパイ映画じみたそれらの計画が存在しないと考えるのは、プーチン大統領の暗殺が明日にでも成就する、と主張するのと同じ程度に荒唐無稽だ。

前出のダノフ准将は、公表されていないが3月にプーチン暗殺未遂事件が確かにあった、とも明言している。

またブダノフ准将は、プーチン大統領がいくつかの病気に罹っていて、精神的にも肉体的にも追い詰められているとも断言。

イギリスのタイムズ紙も、プーチン大統領が「血液のがん」に侵されていると報告し、アメリカのメディアも同様に彼の健康状態が良くない、と伝えている。

また別の英紙によると、プーチン大統領は暗殺を恐れて疑心暗鬼になっている。食事や飲み物は毒見担当のスタッフが味見をした後でなければ口にしないらしい。

クレムリン内ではかつてなくプーチン大統領の求心力が低下している。だが、権力争いは活発化していない。なぜならプーチン時代の終わりを誰もが予感しているからだ。

いま無理して争わなくてもプーチン大統領は間もまく失墜するか死亡する、と彼に続こうとする権力の亡者たちは踏んでいるようだ。

巷に流れている情報がどこまで真実なのかはいまのところ誰にも分からない。

ウクライナやアメリカの諜報機関も、ロシアのそれと同じくらいにフェイクニュースを発信して、情報のかく乱を目指しているからだ。

一方では猫も杓子も希望的観測も、ひたすらプーチン大統領の失脚を待ちわびている。

そして先行きがまったく見えないまま、世界は徐々に戦争報道に飽きつつある。人の集中力は長くは続かないのだ。

プーチン大統領はその時をじっと待っているとも目されている。

世界の関心が薄れたとき、間隙を縫ってプーチン大統領の決定的な攻勢が始まる、という考え方もある。

どこまで行っても一筋縄ではいかないのがプーチン大統領という魔物である。






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