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2021年4月、イタリアの離島で32年間独り暮らしをしていた男が島から転出する、というニュースが注目を集めた。

その男とは当時81歳のマウロ・モランディさん。1989年、イタリアの島嶼州サルデーニャのブデッリ島に移り住んだ。

以来、島のたった1人の住人として生きてきたが、島を管轄するマッダレーナ諸島国立公園の要請で離島することになった。

孤独な男のエピソードは国内のみならず世界の関心を呼び、英国のBBCなどは“イタリアのロビンクルーソー”として彼のこれまでの生き様を詳しく伝えたりした。

モランディさんは人間が嫌いで自然が好き。それが嵩じて、文明から離れて南太平洋のポリネシアの孤島に移り住もうと考えた。

彼は友人とともに航海に出て、サルデーニャ島の北東部にあるマッダレーナ諸島に着いた。そこで働いてポリネシアまで航海を続けるための資金を作ると決めたのだった。

だがブデッリ島を訪ねた際、島の管理人が退職することを知って、そこに移り住むことを決意。以来32年が過ぎた。

モランディさんはインタビューに答えて、32年間健康で風邪一つひかなかったと強調した。

僕はその言葉に強い印象を受けた。

人間は孤独なら風邪をひかない、という真実を確認できたからだ。

コロナパンデミックが起きて以来、僕はインフルエンザにもかからず風邪もひかなくなった。

同居している妻以外の人間とは全くと言っていいほど接触しなかったからだ。

僕は風邪やインフルエンザに愛されていて、それらの流行期にはほぼ必ず罹患する。特にインフルエンザには弱く、しかもかかると高熱が出る。

若いころに横隔膜を傷めていて、それが原因で高熱が出ると医者には言われた。医者は毎年インフルエンザワクチンを打つように勧めた。

僕は懐疑的だった。ワクチンは自然に逆らっているようで危険ではないか、と思い医者にそう伝えた。

彼は即座に言った:

あなたの場合、インフルエンザにかかる度に高熱を出して寝込むことの方がワクチンよりずっと危険です。

目からうろこが落ちた。ワクチンへの僕の信頼はそこから始まった。20年以上前の話だ。

以来、毎年冬の始めにインフルエンザワクチンを打つ。それでもインフルエンザにかかることがある。だが、以前のように高熱が出ることはなくなった。

ワクチンを打っていてもインフルエンザにかかるのは、外に出て他者と接触するからである。あるいは自家に人が訪ねてくるからである。

その証拠に同居人以外にはほとんど会わなかった2020年~2021年の間、前述のように僕全く風邪ひかずインフルエンザにもかからなかった。

独り孤島に生きていマウロ・モランディさんは、風邪をひきたくてもインフルエンザにかかりたくても、ウイルスを運び来る他者がいないため罹患することはなかったのだ。

僕はコロナ感染を避けるために人との接触を絶っていた頃の自分の暮らしを振り返って、“人は孤独ならインフルエンザはおろか風邪さえひかない”としみじみ思うのである。

2020年以降はインフルエンザワクチンと並行してコロナワクチンも接種している。

コロナワクチンを3回接種し4回目を待っていることし(2022年)の春からは、ほぼ普通に外出をし人とも当たり前に会っている。

これまでのところ、コロナはおろかインフルエンザにもかかっていない。だが人との接触が増えた今は、先のことはわからない。



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