窓枠入り夕焼けカッツァーゴ650

イタリア・FI(フォルツァ・イタリア)党党首のベルルスコーニ元首相が、彼得意の放言・迷言・呆言街道を驀進中だ。

最新版は自党の国会議員の集まりで、ロシアのプーチン大統領との友情を再構築しプレゼントと友達の証の手紙を交し合った、と語ったもの。

発言はローマの日刊紙にすぐさまスッパ抜かれて、間もなく船出する予定の右派政権内に激震が走った。

ジョルジャ・メローニ次期首相は、すかさず「NATOに留まり西側諸国としっかり協調する政権だけが私の望みだ」と発言。ベルルスコーニ元首相を強くけん制した。

元欧州議会議長でFI党の副党首でもあるアントニオ・タイヤーニ氏は、FI党も彼自身も、また党首のベルルスコーニ氏も完全にNATO及び西側連合と一体であり、ウクライナを支持する、と火消しにやっきになった。

タイヤーニ氏はメローニ政権で外務大臣に指名されると見られていたが、ボスのベルルスコーニ氏の迷走でその役職が吹き飛んだとも囁かれている。

86歳のベルルスコーニ元首相が繰り出す多くの奇天烈な発言は、もはや老害以外のなにものでもない、と揶揄する声も高まっている。

元首相はかつて自分の庇護下にあったジョルジャ・メローニ氏が、彼を追い越してイタリア首相の座に就くことに実感がわかないのか、あるいはわざと実感できない振りをしているようだ。

誰それをどこそこの閣僚にとか、メローニ氏が傲慢になっているとか、私が次期政権の後見人だなど、など、まるで来たる右派政権が自らの主導でもあるかのような言動を繰り返している。

45歳のメローニ氏は、ベルルスコーニ翁の困った言動を、その都度たしなめたりうまくいなしたりしながら、自身の立場は明瞭に示す、という大人の対応をしている。

その態度は、彼女の首相としての資質はもしかするとベルルスコーニ元首相を上回るのではないか、と思わせるほど堂々としている。

プーチン大統領と極めて親密な間柄だった元首相は、ロシアのウクライナ侵略に際して口を噤んで、厳しい批判にさらされた。彼は後になって「しぶしぶ」プーチン大統領の動きを糾弾する発言をした。

だがその後は積極的にロシアを責める言動は控えて、彼が内心プーチン支持であることをにおわせ続けてきた。

そして元首相は何を血迷ったのか、彼自身も軽くない役割を担うであろう次期政権の発足直前になって、冒頭の発言をして世間を唖然とさせたのである。

元首相は一貫してEU支持者であり続けている。プーチンと親しい仲であるにもかかわらず、彼がロシアの独裁者のウクライナ侵略を批判したのも、芯に強いEU信奉の精神があるからだ。

そのことは恐らく今後も変わらないだろう。

僕はそれを見越して、元首相は時期政権内でEU協調路線を主張し続けるだろうとそこかしこで語ってきた。

彼がまさしくそう動けば、それは間違いなくイタリアの国益に資する。

彼の方向性は今後も同じと考えられる。だが、プーチン大統領とプレゼントを交換し合ったり、親しく手紙をやり取りしたなどと得意気に語るのは、相も変らぬ元首相の子供じみた軽挙妄動だ。

バカバカしいが、時節がら見苦しいことこの上もない。





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