柿2個家壁背景やや鮮明650

数年前に庭に植えた柿の木が実をつけている。

柿はイタリア語でも「カキ」と呼ばれる。そのことから分かる通り柿はもともとイタリアにはなく、昔日本から持ち込まれたもので、ほとんどすべてが渋柿である。

そのままでは食べられないので、イタリア人は容器や袋に密封して暗がりに置き、実がヨーグルトのようにとろとろになるまで熟成させてから食べる。そうすると渋みがなくなって甘くなるのだ。

要するにイタリアには、固い渋柿かそれを超完熟させた、とろとろに柔らかい甘柿しかない。

つまりこの国の人々にとっては、柿とは「液状に柔らかくなった実をスプーンですくって食べる果物」のことなのである。

最近は外国産の固い甘柿も売られているが、彼らはそれもわざわざ完熟させて極端に柔らかくしてから食べる。

かつて日本から柿をイタリアに持ち込んだのは恐らくキリスト教の宣教師だろう。

その際彼らがあえて渋柿を選んだとは考えにくい。きっと甘柿と渋柿の苗木を間違えたのだ。

あるいは甘柿のなる木が多くの場合、接ぎ木をして作られるものであることを知らなかったのだろう。

そんなわけで「普通に固い甘柿」が大好きな僕は秋になるといつも欲求不満になる。

店頭に出回る柔らかい柿はあくまでも「カキ」であって、さくりと歯ごたえのある日本のあの甘い柿とはまるきり別の果物だと感じるのだ。

そこで庭に柿の木を植えて甘柿の収穫を目指した。

植木屋に固い甘柿がほしいのだと繰り返し説明して、柿の木を手に入れ植えた。

数は多くないが甘柿の木はあるのだ。それには蜘蛛の巣のような模様のある実が生る。ところが庭の木に生った実は全て渋柿だった。

植木屋が筆者をだましたとは思えない。

彼はきっと筆者にとっての固い甘柿の重要さが理解できなくて、実がとろとろになるまで熟成させて食べれば渋いも甘いも皆同じじゃないか、と内心で軽く見切って木を筆者に売ったと見える。

少し腹立たしくないこともないが、実をつけた柿の木は景色として絵になるので、まあ好し、と考えることにした。

結局、庭に生る柿は熟成させて家族が食べ、僕は相変わらず店で固い甘柿を買って食べている。



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