衛星を介してNHKの番組をよく見る。なかでもニュースはほぼ毎日欠かさずに見ている。
時間がないときは録画してでも見る番組もある。日本ではBS1で放送され、総合テレビの深夜にも再放送されているらしい「国際報道2022」である。2014年に始まり毎年年号だけを変えて続いている。
この番組は世界各地のニュースをまとめて掘り下げて見せる、NHKならではの見甲斐がある内容だから、外国に住む身としては親近感も覚える。
同時に僕はBBC、CNN、EuroNews、Al Zzeeraなどの英語放送とイタリアのNHKであるRAIの報道番組等も欠かさず見ている。なので「国際報道2022」を情報収集というより“日本人による世界の見方”という観点で注視することが多い。
番組の内容は世界中に張り巡らされたNHKの取材網を駆使して構成され面白く深い。だがそれを伝えるスタジオの構成に違和感を覚える。
このことは2017年に番組のメインキャスターになった花澤雄一郎記者にからめても書いた。
それは物知りの兄貴に教えを請うおバカな妹、という設定への疑問だ。花澤キャスター時代に始まり、次の池畑修平キャスター時代へと受け継がれた。
設定は相変わらずだったが、池畑キャスターはもしかすると時代錯誤な設定への疑問が内心あったのではないか、という雰囲気が感じられた。
それでも番組の構成が変わることはなかった。ちなみにおバカな妹役のサブキャスターは増井渚アナから酒井美帆アナへと変わった。
油井秀樹キャスターに変わってから国際報道には別の不穏な仕様も加わった。
番組の冒頭で、カメラに向かって斜めに並び立っている3人のキャスターが、次のカットで切り替わるカメラに向かって回れ右をする。
その動きが3人共に完璧でまるでロボットのように少しのズレもない。日本的な完全無欠の動作だが、とても違和感がある。忌憚なく言えばほとんど滑稽だ。
カットはその日のニュース項目を表示するために成される。カメラを引いて大きくなった画面に項目をスーパーインポーズするのである。
だがそのシーンは、3人の出演者が「ロボット的」という以外には何の豊かさも番組にもたらさない。項目を表示したいなら初めから画面を広げておくなど、幾らでも方法はある。
珍妙なシーンが毎回繰り返されて飽きないのは、制作者が滑稽に気づかず且つ3人の動きが「型」として意識されているからだと考えられる。
「型」になった以上、それは自由よりもはるかに重要な要素と見なされるのが日本社会であり、日本的メンタリティーだ。
型の奇怪さは多々あるが、例えば教会での結婚式の際のバージンロードの歩き方などもそうだ。
バージンロードという和製英語はさておき、絨毯を父親と花嫁が歩く際に一歩一歩を型にはめて歩くのは珍妙だ。結婚式場業界が作った型にからめとられているのが悲しい。
結婚式はドラマだからそれでいいという考えもあるかもしれない。だが、不自然すぎて居心地が悪い。
確かに結婚式は晴れ舞台だが、型が肝心の歌舞伎や能などの芸能舞台ではないのだから、型にはめずに自由に動くほうがいい。
型には型の美しさがある。だが「型を破る」という型もあることを認めて、もう少し精神や発想の自由を鼓舞するほうが人間らしいし、より創造的だ。
型にこだわり過ぎる「国際報道2022」のオープニングは、「報道のNHK」の一角を担う重要な番組の絵造りとしては寂しい、と毎回違和感を覚えつつ見るのはかなり辛い。