PK戦で日本を退けたクロアチアが、強豪のブラジルも同じPK戦で下して準決勝に進んだ。
クロアチアの強さがあらためて証明された試合結果だ。
ブラジル戦の前にクロアチアが日本を破った試合では、僕はクロアチアの強さと同時に日本の強さも実感した、と強調しておきたい。
僕は日本VSクロアチア戦を日本サッカーのレベルを計る試金石として見ようとしていた。
日本がドイツとスペインに勝ったのは、まぐれとまでは言わないが、ラッキーあるいは巡り合わせの妙、といった類の出来事に感じられた。
2度続けてのフロックの可能性は極めて低い。ドイツとスペインに連続して勝ったのは日本にそれなりの力があるからだ、という考えもある。
それでも世界トップクラスの2チームと日本の力が、一挙に逆転したとは考えにくい。
一方でクロアチアなら、日本との力の差はそれほどあるとは見えない。クロアチアは98年W杯で3位になり、前回ロシア大会で準優勝までしているチームだ。
欧州の一部だからサッカーの真髄を理解し、そこから生じるプレースタイルも身に着けている。ひとことで言えば要するに日本より力量は上だ。
しかし、日本の力も最近は間違いなく伸びている。クロアチアと実力が真に拮抗している可能性も高い。
クロアチアにはモドリッチというずば抜けたテクニックと戦術眼を持つスーパースターがいるが、集団力の強い日本の特徴が彼の天才力を抑える、という見方もできた。
両チームの戦いを、僕は12月3日から6日にかけての旅の途中、アルプスの麓に近い街でテレビ観戦した。
移動中のため他の試合は見逃したり流して見ていただけだが、日本戦はさすがにしっかり見た。
日本が先制したときは、あるいは、と大きく期待した。しかし、同点に追いつかれたときはやっぱりだめだ、負ける、といやな予感がした。
負ける、とは90分以内にさらにゴールを決められて負ける、という意味である。つまるところ欧州チームのクロアチアが強いのだ、とあきらめ気味に思った。
だが日本は90分をほぼ対等に戦い、延長戦も互角に渡り合った。しかし残念ながらPK戦で敗れた。
PK戦を偶然の産物と見なしてそこでの勝敗を否定する者がいる。だがそれは間違いだ。
PK戦は90分の通常戦や延長戦と変わらないサッカーの重要な構成要素だ。PK戦にもつれ込もうが90分で終わろうが、勝者は勝者で敗者は敗者である。
現実にもそう決着がつき、また歴史にもそう刻印されて、記録され、記憶されていく。
従って日本の敗北はまぎれもない敗北だ。同時に日本とクロアチアの力は拮抗していた。90分と延長の30分でも決着がつかなかったのがその証拠だ。
僕は日本が世界最高峰のドイツとスペインを破ったことよりも、日本の実力がクロアチアのレベルに達したらしいことを腹から喜ぶ。
既述のようにクロアチアは、過去のW杯で準優勝と3位に入った実績を持つ「欧州のサッカー強国」だ。
クロアチアに追いついた日本は、物まねのポゼッションサッカーや無意味なボール回しや“脱兎走り”を忘れて、蓄積した技術を基に「独自の戦術とプレースタイル」を見出し次のW杯に備えるべきだ。
独創や独自性こそ日本が最も不得手とする分野だ。だがそれを見出さない限り、日本がW杯で飛躍しついには優勝まで手にすることは夢のまた夢で終るだろう。