日本から戻ると北イタリアも春爛漫の景色に変貌していた。
菜園にも命がみなぎっている。
命は野菜と雑草のせめぎあいである。
風が冷たかった3月、菜園の至るところにサラダ用野菜の混合種や春菊、またチンゲンサイや葱などの種をびっしりとまいた。
菜園は有機農法で耕しているため雑草が繁茂し虫がわく。
種下ろしをした野菜たちは根がおだやかで育ちやすく、しかも除去が簡単だ。
土中深くまで根を張るしつこい、処理に困る、つる草や宿根草などとは大違いである。
ことしは野菜作りが始まる3月から4月にかけて日本に帰るので、雑草抑えのつもりもあって前述の野菜たねを満遍なく播種したのだった。
雑草に勝って大きく伸びている野菜もあれば、怖れるように小さく芽を出し青草に辺りを覆われているものもある。
よく育っているものは収穫して食べていくが、雑草に圧されて萎縮している芽は草と共に除き、跡に不断草に始まる温野菜用野菜や根菜、また果菜や花菜の苗を植えつける。
畑では種を蒔いて後は放っておいても最低限の作物が育つ。
僕は菜園を細かく手入れする野菜作りではない。作業をしたいのは山々だが時間がない。除草などもほとんどしないまま放っておくことが多い。
雑草は取り除かないと次々に花をつけ種を撒き散らして大きくはびこる。
それは分かっているが、じっくりと土に向き合う時間がないので、ミニ耕運機をひんぱんに畑に入れて鋤いてしまうことが多い。
ことしは特に耕運機の出番が多くなりそうである。
それは栽培法や土作りという意味では邪道かもしれないが、それでけっこう除草がうまく行き作物も育つ。
自然は怠け者の野菜作りにも惜しみなく恵みを与える。
母なる大地の面目躍如である。