女子W杯50-PLAYERS650


女子サッカーW杯の準々決勝で、なでしこジャパンが負けてしまった。

そこまでの戦いぶりは、2011年のW杯で優勝した時よりも勢いのある進撃だったので、僕は密かに優勝を確信していた。

だが、やはり世界の壁は薄くはない。

僕が女子サッカーの魅力に気づいたのは― 恐らくたくさんのサッカーファンがそうであるように― 2011年のW杯を通してだった。

決勝戦で日本のエースの澤穂希選手が見せた絶妙のヒールキックに僕は呆気に取られた。

世界トップの男子プロ選手にも匹敵する彼女のテクニックは、僕の目のウロコを30枚ほどはがしてくれた。

だがそれ以後は女子サッカーに僕の関心が向かうことはなかった。2015年、2019年のW杯もほとんど記憶がない。

2015年には日本は準優勝したにも関わらずである。そのあたりに女子サッカーの人気の限界が垣間見えると言えそうだ。

ことしの大会も、快進撃するなでしこジャパンを英BBCが絶賛している報道を偶然目にして、はじめて大会を知り俄然興味を持ったという具合だった。

関心を抱いてからは、ハイライトシーンを主体に試合の模様を追いかけてきた。

そこには目の覚めるようなプレイの数々が提示されている。世界の女子サッカーのレベルは高いと思う。

女子サッカーを評価しない人々は、試合展開が遅い、激しさがない、テクニックが男子に比べて低いなどど口にする。

だが、ハイライトシーンを見る限りでは試合展開はスピーディーで、当たりも激しく、プレイの技術も十分に高いと感じる。

映像がハイライトシーンの連続、という事実を差し引いても見ごたえがあるのである。

女子サッカーは男子のそれとは違うルールにしたほうがいい、という声もある。

動きが遅く体力差もあるので、ピッチを小さくしそれに伴ってゴールも小さくする、というものである。

だが世界のトッププレーヤーが躍動するW杯を見ていけば、その必要はないという結論になる。

例えばゴルフの男子プロと女子プロのルールは全く同じだが、男子と女子では面白さが違う。人気も拮抗している。もしかすると女子プロの人気のほうが高いくらいだ。

女子サッカーも時間が経つに連れて、男子とは違う独自の面白さをもっとさらに発揮して行くと思う。

例えば批判者の言うスピード不足は、むしろほんの一瞬の時間のズレ故にプレイの詳細が鮮明に見える、という利点がある。

当たりの激しさがないという批判に至ってはほとんど言いがかりだ。選手たちは十分に激しく当たる。だが男子のように暴力的にはならない。

女子選手たちは暴力に頼らない分を、巧みなテクニックでカバーしていると見える。むしろ好ましい現象だ。

テクニックが男子に比べて低いというのは、男子とのスピードの違いや、粗暴な体当たりの欠如などが生み出す錯覚に過ぎない。

今この時の世界のトップ選手が活躍する女子W杯の内容は十分に豊かだ。しかも進化、向上していくであろう糊しろが非常に大きいと感じる。

今後プレー環境が改善されて競技人口のすそ野が広がれば、女子サッカーのレベルがさらに飛躍的に高まり、人気度も男子に拮抗するようになるかもしれない。

例えば女子ゴルフのように。

あるいは女子バレーボール並みに。

その他多くのスポーツ同様に。