イタリアはようやく中国とのズブズブの関係を切り捨てると決めたらしい。
インドでのG20サミットに出席したイタリアのジョルジャ・メローニ首相は、中国の李強首相と会談した際に、「一帯一路」構想あるいは投資計画から離脱すると伝えたとされる。
2019年、イタリアはEUの反対を無視して、G7国では初めて中国との間に「一帯一路」投資計画を支持する覚書を交わした。
当時のイタリア首相は、ジュゼッペ・コンテ「五つ星運動」党首。同じく「五つ星運動」所属で中国べったりのルイジ・ディマイオ副首相と組んでのごり押し施策だった。
イタリア政府は世界のあらゆる国々と同様に、中国の経済力を無視できずにしばしば彼の国に擦り寄る態度を見せる。
極左ポピュリストで、当時議会第1党だった「五つ星運動」が、親中国である影響も大きかった。
またイタリアが長い間、欧州最大の共産党を抱えてきた歴史の影響も無視できない。
共産党よりもさらに奥深い歴史、つまりローマ帝国を有したことがあるイタリア人に特有の心理的なしがらみもある。
つまりイタリア人が、古代ローマ帝国以来培ってきた自らの長い歴史文明に鑑みて、中国の持つさらに古い伝統文明に畏敬の念を抱いている事実だ。
その歴史への思いは、今このときの中国共産党のあり方と、膨大な数の中国移民や中国人観光客への違和感などの、負のイメージによってかき消されることも多い。
しかし、イタリア人の中にある古代への強い敬慕が、中国の古代文明への共感につながって、それが現代の中国人へのかすかな、だが決して消えることのない好感へとつながっている面もある。
それでもイタリアは、名実ともにEUと歩調を合わせて中国と距離を取るべきだ。ロシア、北朝鮮などと徒党を組みウクライナの窮状からも目を背ける、反民主主義の独裁国家と強調するのは得策ではない。
実のところイタリアは、「一帯一路」構想から離脱するかどうかまだ正式には決めていない。離脱すると断定的に伝えたのは米国の一部メディアのみだ。
イタリアが今年末までに離脱すると明言しない限り、協定は2024年3月に自動更新される。
メローニ首相は、債務に苦しむイタリアが数兆ドル規模の「一帯一路」投資計画に参加することの「メリットを熟知している。
同時にその政治的なデメリットについても。
メローニ首相は、一帯一路からの撤退を選挙公約にして先の総選挙を戦い、イタリアのトップに昇りつめた。従って彼女の政権が覚書を破棄するのは驚きではない。
メローニ首相は、中国を慕う極左の五つ星運動とは対極にある政治姿勢の持ち主だ。だが中国との経済的結びつきをただちに断ち切ることはできないため、今この時は慎重に動いている。
離脱した場合は中国の報復もあり得ると強く警戒しているフシもある。
そうではあるが、しかし、「一帯一路」覚書からのイタリアの離脱は避けられないだろう。それは歓迎するべきことだ。