横付け財務警察船650

イタリアへの難民・移民の流入が止まらない。イタリアは歴史的に移民の流入に慣れている。ローマ帝国時代から地中海を介して多くの人々が行き交ったからだ。

だが近年の難民・移民の上陸には政治的な思惑も色濃く反映して問題が複雑化している。言うまでもなくそれはEU(欧州連合)をはじめとする欧州全体の国々に共通する課題である。

ことし1月から9月半ばまでの間にイタリアには129、869人の難民・移民が押し寄せた。それは難民危機が最高潮に達した2015~2016年に迫る数字だ。

右派のジョルジア・メローニ首相は移民の規制強化を選挙公約にしてきた。政権の座に就いてからも彼女は一貫して反移民のスタンスを貫いている。

それでも難民・移民の流入は止まらない。むしろ増えている。

強い危機感を抱いた彼女はEUに窮状を訴えた。すると欧州委員会のフォンデアライエン委員長が、難民・移民が多く流入するイタリア南部のランペデゥーサ島を訪問、視察した。

欧州連合はリベラル保守勢力が優勢だが、強硬右派のメローニ政権の訴えに耳を傾けることも多くなっている。イタリア以外の国々の危機意識も一段と強くなっているからだ。

イタリアに到着する難民・移民は、そこを経由地にして欧州全体、特に北部ヨーロッパを目指して旅をしていく者が多いのである。

難民危機真っ最中の2015年9月、ドイツのメルケル首相はハンガリーで足止めされていた難民・移民100万人あまりをドイツに受け入れた。

その後、メルケル首相の政策は批判され、欧州は移民に対して厳しい方向に動いている。だがそれは欧州が移民に扉を閉ざすことを意味しない。

欧州は今後も人口減少傾向が続くだろう。移民を受け入れて労働力を確保し、彼らの子供たちが教育を受け社会に溶け込み融合して、欧州人として成長していくことを認める以外に生き残る道はない。

極右とも規定されるメロ-ニ首相でさえそのことを知悉している。だからこそ彼女は、例えば日本のネトウヨ系排外差別勢力のように「移民絶対反対」などとは咆哮せず、飽くまでも不法移民を排斥しようと主張する。

法治国家である限り、社会は法に支配され庇護されてしか存在し得ない。従って彼女の主張は正しい。

だが問題は例によって、極右勢力などが我が意を得たりと勇んで、反移民感情が徐々に醸成されることだ。

放置するとそれは拡大強調されて、ついには社会全体が不寛容と憎悪の渦巻くファシスト支配下のような空気に満たされかねない。

イタリアを含む欧州が、難民はさておき、移民への寛大な施策を捨ててより厳しい規制をかける方向に動き出せば、その危険は高まるばかりだ。





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