能登半島地震直後の世界の報道の様子は、かなリラックスしたものだった。
震度(マグニチュードではない)7という恐ろしい数字の割には、死者もなく被害も小さいというニュアンスの報告が多く流れた。
英BBCは、かつて日本駐在で今は台湾在の記者の報告として、日本人によるもの悲しい「日本ってすごい」類いの発信かと見紛うほどの日本礼賛記事を書いた。
それらの影響もあったが、震度7という不快な数字にも関わらず被害が最小限に抑えられているらしい、と僕はすっかり安心した。
間もなく事態は深刻だということが明らかになった。が、時すでに遅く、僕はあちこちに「明けましておめでとう」とノーテンキな年賀を発送してしまっていた。
慶賀とは真逆の、犠牲者の数と被害の大きさが連日増幅されていった。
打ち明ければ最近、特に日本経済の不振を見続けるうちに、原発の再稼動、推進も致し方ないのではないか、と思ったりしたこともあった。
だが能登半島地震を見て、やはり日本には原発は置いてはならない、と改めて考え直している。必ず再生可能エネルギーへとシフトしていくべきだ。
コストがかかり過ぎるなどと言ってはいられない。今後必ず来るであろう原発地域への大地震と津波被害をカバーする費用と、労力と、心理的ダメージ等の巨大さを思えば、再生可能エネルギー転換へのコストなど知れたものだ。
国の地震調査委員会の「全国地震予測地図」によると、能登半島を含む石川県の地震発生率は、南海トラフ地震の発生確率に比べるとほぼゼロと形容できるほどに低い。
程度の差はあるが、全国の発生確率予測も同様だ。言葉を替えれば南海トラフ地震の発生確率」だけが、政治的意図によって真実以上に高く評価されている。
今後30年ほどの間に大地震の起きる確率が「0.1%~3%未満」とされていた能登半島の巨大な揺れは、未知の断層で起きた可能性がある。
日本列島が乗っかっている活断層は、徴しが地表にも現われる極くわずかな部分を除いて、ほとんどが謎。未知の領域である。
危険が比較的高く、また政治的な狙いも加わって、発生確率が実際よりも異様に高く評価されているとされる南海トラフ地震域ほどではなくとも、北海道から沖縄までの日本列島はどこもかしこも危険地域なのだ。
もはや一刻の猶予も許されない。日本は脱原発に舵を切るべきだ。一斉に稼動を止めるのはさすがに無理だろうが、古い原発から順に廃炉にしていく計画を立てて、それに並行して再生可能エネルギーへとシフトして行くべきだ。
今回の能登地震は不幸中の幸いとも言うべきものだ。被害は甚大だが原発事故は起こらなかった。
再び福島原発のような惨事が発生すれば日本は2度と立ち上がれない可能性が高い。