迫力魚っぽい650

スーパースター・ロナウドのポルトガルは、サッカー欧州選手権の準々決勝でフランスに敗れて姿を消した。

その前の試合でペナルティキックを外して、悔しさのあまり男泣きに泣いたロナウドは、結局準々決勝でも活躍することはなかった。

ポルトガルはロナウドばかりではなく、チームそのものが冴えなかった。

それはしかしフランスも同じ。ケガのために本来の力が出せないエムバペに付き合うようにつまらない試合運びに終始した。

不調の両チームの戦いは、その前に行われたスペインVSドイツの壮絶なゲームに比較するといかにもつまらなかった。

かつてのロナウドは退屈な試合をひとりで面白くするほどの力があった。違いを演出できる選手だったのだ。

そのロナウドはもはやいない。

ところが試合を実況したイタリア公共放送RAIのアナウンサーは、ロナウドの欧州選手権は「とりあえず」終わった。次の欧州杯ではロナウドは43歳前後になっているが、またピッチに戻ってくるだろうという趣旨の発言をした。

僕は「え?」と声に出しておどろいた。

ロナウド自身は2年後のワールドカップまでは代表チームに留まりたいと希望している。だが、4年後の欧州杯まで代表でいるというのは荒唐無稽ではないかと思ったのだ。

僕は彼が途方もない金額でサウジアラビアのリーグに移籍した時点で、ポルトガル代表としての選手生命は終わったと思った。

ここイタリアでは、全盛期を過ぎた選手が欧州以外の国に移籍すると、彼らの力量が低レベルのリーグに引きずられてさらに落ちる、と見なして代表から排除する。

イタリアにも匹敵する欧州の強豪であるポルトガルも、当然そうだと僕は思い込んでいたのだ。

だが彼は依然としてポルトガル代表チームに召集され続けている。

欧州杯準々決勝で低調だったポルトガルチームの中で、自身も精彩を欠きながらそれでもチームの大黒柱として強い存在感を示したロナウドは、あるいはまだ不死身なのかもしれない。

ロナウドは昨年、年棒2億ユーロ、当時のレートで約280億円というとてつもない金額に釣られてサウジアラビアに移籍した。

僕はその時、彼が金に転んだと考えてがっかりした。だが見方を変えればロナウドは、その途方もない金額のおかげでスーパーヒーローとして「生かされている」とも言える。

もともと練習熱心な努力家でプロ意識の強烈な レジェンドは、大金に見合う活躍を目指して老体にムチ打って頑張っているのかもしれない。

ならばロナウドは50歳までの現役を目指して突き進んでもいいのではないか。

どうせ潔い引き際の美学なんて知らないし、知る気もないであろう勇者なのだから。

もっともサウジアラビアのチームとの契約が切れた後、いったい誰が彼を雇い続けるのかという根本的な問題があるけれど。





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