欧州ネーションズリーグで、イタリアは強豪フランスを3-1で下した。
親善試合ではないガチの勝負での勝利。
しかも試合開始直後の13秒で1失点という大逆風を押し返して、確実に得点を重ねた。
対仏戦でのイタリアの勝利は2008年以来16年ぶり、敵地内(アウェー)での勝利はなんと1954年以来、70年ぶりである。
イタリアサッカーは4度目のワールドカップを制した2006年以降、ずっと不調続きでいる。
イタリアは2012年、落ちた偶像の天才プレーヤー、マリオ・バロテッリがまだ輝いていた頃に欧州カップの決勝戦まで進んだ。だが、圧倒的強さを誇っていたスペインに4-0とコテンパンにやられた。
屈辱的な敗北を喫したのは、負のスパイラルに入っていたイタリアが「まぐれ」で決勝まで進んだからだ、と僕は勝手に解釈した。
不調の波は寄せ続け、イタリアは2018年、2022年と2大会連続でワールドカップの出場権さえを逃した。
2021年にはコロナ禍で開催が1年遅れた欧州選手権を制した。だが、直後に同じ監督がほぼ似た布陣で戦ったワールドカップ予選でモタついた。
それはイタリアが、やはり絶不調の泥沼から抜け出していないことを示していた。
ことし6月のビッグイベント、再びの欧州選手権でイタリアはまたもや空中分解した。それを受けて、スパレッティ新監督は厳しい自責の念を繰り返し口にし自己総括を続けた。
そして最後には、選手は戦術の型に嵌められることなく自由でなければならない、とイタリアの伝統的なスキーム絶対論まで否定して昨晩の試合に臨んだ。そして見事に勝利した。
それがイタリアの復活の兆しなのかどうかは、ネーションズリーグでのイタリアの今後の戦いぶりを見なければならない。
だが誠実な言葉と行動でイタリアサッカーの歪みを指摘して、果敢に改造に乗り出そうとするスパレッティ監督の姿勢は大いに評価できる。
2020年(2021年開催)欧州カップで優勝したマンチーニ前監督も、精力的にチームの改造を進めた。だがそれは、いわば目の前の試合を制するためだけの改造に過ぎなかった。
片やスパレッティ監督は、大局的な立場でイタリアサッカーの抜本的な改革を目指しているように見える。頼もしい。
今後も紆余曲折はあるだろうが、イタリアサッカーは、かつての強豪チームに戻るべく確実な道を歩みだしているようにも見える。
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