口角泡飛ばし男のイーロン・マスク氏が、なぜかイタリアの移民政策にちゃちゃを入れて物議を醸している。
イタリアのメローニ極右政権は、選挙公約を履行する形で、不法移民をアルバニアの抑留施設に送りこんだ。
するとイタリアの司法は、それを違法として移民7人をイタリアに差し戻す判決を下した。マスク氏はそのことを踏まえて、イタリアの裁判官は更迭されるべき、と声高に主張したのである。
遠いアメリカから、ただの金持ち様が「あんた何様のつもり?」の思い上がり行為に走るのは、むろん米大統領選でトランプ候補が勝利したことを受けてのアクションである。
イタリアの最極右とも見られていた「イタリアの同胞」党首・メローニ首相は、政権の座に就いて以来、政策スタンスをより中道寄りに軌道修正して、国内でもまたEU内でも好評に近い反応さえ得ている。
一方、国内でもまたEUからも胡散臭い目で見られているイタリア政権内のもうひとつの極右勢力、「同盟」を率いるマッテオ・サルヴィーニ副首相は、マスク氏の主張を歓迎する声明を出した。
インフラ大臣も兼ねるサルヴィーニ副首相は、プーチン大統領とトランプ次期大統領の信奉者でもある。
そのことからも分かるように、マスク氏の悪女の深情けな放言は、ファシスト気質のトランプ次期大統領の威を借りつつ、イタリアの極右政権へ親しみをこめて送ったエールだったのだ。
むろんそこには、移民に厳しい姿勢で臨むトランプ次期大統領へのヨイショの意味もあるのは言うまでもない。
しかし、肝心のイタリア政府のボス、メローニ首相は何も反応しなかった。
代わりに、今やイタリアの極右の総大将の位置に君臨する、サルヴィーニ副首相が喜んだという構図である。
マスク氏はただの大金持ちだが、一代で財を成した事実にはそれなりの理由があるに違いない。きっと何者かではあるのだ。
しかし、不遜な独り善がり言動が多いのは、どうにもいただけない。
彼は来たる2025年1月以降の4年間、トランプ大統領の右腕兼太鼓もちとして、あらゆる場面で不愉快な言動に出るであろうことが確実視されている。
マスク氏はアメリカ国籍をもつものの、幸い同国生まれではないため自身が大統領になることはできない。
だが、老いぼれで危険なトランプ大統領を操って、世界をさらなる分断へと導きかねないことが懸念される。