国際刑事裁判所(ICC)は11月21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相
、またハマス軍事部門のデイフ司令官に対して、戦争犯罪及び人道に反する罪の疑いで逮捕状を出した。
ネタニヤフ首相はICCの決定を“例によって”「反ユダヤ的」と非難した。
彼は反ユダヤ主義、つまりAntisemitismという言葉に反射的に強い怖れを抱く欧米世論を意識して、彼自身やイスラエルあるいはユダヤ人全般に対する批判や疑問や否定的見解に対しては、ほぼ常にその言葉を口にする。
ネタニヤフ首相のその口癖は、自身の脆い政治的立場を秘匿するための詭弁、と断言してもあながち間違いではないだろう。
ICCはイスラエルやユダヤ人を糾弾しているのではない。飽くまでも無差別攻撃で無垢なガザの住民を虐殺している首相と元国防相を、ピンポイントで有罪と宣告してしているだけだ。
それは合法であり道徳的にも真っ当なアクションだ。
アメリカのバイデン大統領を始めとする、欧米の“必要以上に”親イスラエル派の指導者は、ICCはガザ地区でのイスラエルの行動と、2023年10月7日のハマスによる攻撃を、道徳的に同じと見なしていると批判した。
だがその言葉自体が既に虚妄だ。なぜならネタニエフ首相率いるイスラエル(軍)は、ガザ地区において「無差別攻撃」を行い民間人を殺戮しまくっているのであって、単なる「行動」ではない。
またICCは敢えて言えば、昨年10月7日のハマスによる攻撃と、イスラエル軍の残虐行為に「道徳的同等性」を見出しているのであって、それ以上でも以下でもない。
また僕を含む世界中の心ある人々は、ユダヤ人が歴史的に蒙ってきた多くの差別と苦しみと、その集大成ともよぶべきホロコーストを断じて忘れていない。
ネタニヤフ政権がガザ地区で犯している大量殺人は、れっきとした犯罪であり人道に反する悪逆だと断じているに過ぎない。
欧州ではイタリアとオランダがICCの決定に従って、ネタニヤフ首相とガラント元国防相が入国すれば逮捕すると表明した。
また英国も、慎重な表現を用いつつ、彼らが入国することがあれば、イタリアとオランダに倣って逮捕する旨の声明を出した。
一方、事大主義者の日本政府は、例によって沈黙している。
自らの考えも主体性も、従って危機意識もない日本の石破政権は、黙ることでネタニヤフ首相を支持し、パレスチナの人々を見殺しにしているという見方もできる。
それとは逆に、極右と断罪されることも多いここイタリアのメローニ首相は、ICCの決定を尊重する誠実な態度に出たことで、この事案でもまた好感度を上げたようにさえ見える。