トランプ影絵忠誠心と復讐が鍵の内閣650

DEMOCRATISM『民主至上主義と訳したコンセプトが、知る人ぞ知る人々の間で取りざたされているようだが、DEMOCRATISMの日本語訳はひねらずにそのまま「民主主義愛好主義」などとするべきではないか。

なぜなら真に民主主義を信奉する者は、民主主義が最良つまり「至上の政体」であり絶対的な価値のあるものとは考えないからだ。

もしそう考える者があるとすればその人は民主主義者ではない。それどころか民主主義を騙る独裁主義者である可能性がある。独裁主義者はいつの時代も「われこそは至上の政治の体現者」と強弁して止まない。

民主主義は最善の政治体制ではなく、われわれが知る限りの政治体制の中のBetterな体制であるに過ぎない。そしてBestが見つからない限りはBetterがすなわちBestなのである。

民主至上主義とはひとこと言えば、アメリカの民主党政権とその支持者のことである。

民主至上主義 と訳されたDEMOCRATISMを論じた米ペパーダイン大講師のエミリー・フィンリーは、2024年11月の大統領選で敗北したアメリカ民主党を次のように批判した。

すなわち民主党がエリート主義に陥って民意を無視し、平等、多様性、移民包容など、エリートが認める主張のみを「民意」として容認。それに合わない主張を実質的に排除した。

それは彼女に言わせれば、民主党がいわゆる民主至上主義に陥っているからだと結論付けた。

一方共和党は大衆の声を聴き、大衆が希求するアメリカ第一主義を貫いて選挙に勝った。トランプ主義はポピュリズムではなく、トランプ氏が民衆の声に耳を傾けている証だと言う。

仮にそれが正しいとしよう。だからといって、第一次トランプ政権と次期トランプ政権がエリート支配の政権ではないとは言えない。

民主主義は国民の総意に基づくものとはいえ、政権を担う者は民主党でも共和党でも選ばれた人々、すなわちエリートであることに変わりはない。

民主党は大衆の味方を標榜しながら実際には民衆とかけ離れた特権層や富裕層ばかりに肩入れをしてきた。だから選挙に負けたのである。民主党が民主至上主義に陥っていたからではない。

またたとえそうだとしても、民主党はそれを反省し修正して次の選挙で共和党を打ち負かせばいいだけの話である。

ところが著者フィンリーは、民主党の在り方を民主至上主義そのものと規定して徹底否定する。エリート主義が民主至上主義の特色であるなら、共和党も同じであるにも関わらずである。

選挙で負けた民主党だけが民主至上主義に陥っていると言い張るのは彼女が明らかに共和党支持者でありトランプ主義信奉者だからだ。

共和党を支持しトランプ主義を賛美するのは彼女の自由だ。だが選挙の敗北が即民主至上主義のなせる業だと決め付けるのは当たらない。

民主党は過ちを犯した。それは修正可能なものだ。民主主義は断じて完璧ではない。むしろ欠点だらけの政治体制だ。

だが民主主義は失敗や過ちや未熟さを容認する。容認するばかりではなくそれらの罪を犯した者が立ち直ることを鼓舞し激励する

変動し多様性を称揚し意見の異なる者を包括して、より良い方向を目指し呻吟することを許すのが民主主義なのである。

トランプ主義はその対極にある。トランプ主義者が自らの間違いを認め、多様性を尊重し、移民や 反対勢力を寛大に扱うと考えるのは無理がある。

トランプ主義はトランプ次期大統領が自ら語ったように独裁を志向し、対抗勢力を許さず、自ら反省することはなさそうである。

彼はプーチン、習近平、金正恩を始めとする強権主義指導者と極めて親和的な政治心情の持ち主だ。

彼はまた欧州の極右勢力や中東の独裁者やアジア南米等の権威主義的政権などとも手を結ぶ。

さらにトランプ主義は、政治的スタンスに加えて、トランプ氏の人格そのものも不信の対象になったりするところが極めて異様だ。

民主党は間違いを犯して選挙に負けた。

片や共和党あるいはトランプ主義は、不寛容と差別主義と移民排斥を主張して、2017年以来続く右翼思想あるいは極右体質をさらに強めて政権を握る。

エミリー・フィンリーの言う、平等、多様性、寛容など「民主党エリート」が認める主張」を否定して誕生するのが次期トランプ政権である。

トランプ主義は平等、多様性、寛容に加えて、対話を重視する民主主義もジェンダー平等も政治的正義(ポリティカルコレクトネス)主義も拒絶する。

要するに、言葉を替えれば、これまで民主主義社会が善とみなして獲得し実践しさらに進歩させようとして、必死に努力してきた全ての価値観を破壊しようとする。

破壊しその対極にある不平等、差別主義、排外主義、不寛容などを正義と決めつけ旗印にして前進しようとする。

トランプ次期大統領とその支持者は、民主主義を守ると主張するが、彼らが守り盛り立てようとしているのは権威主義である。民主主義の名の下にファシズム気質の政権を維持発展させようとしている。

真の民主主義、あるいは変わることを容認する柔軟な民主主義を信奉する自由主義者は、ネトウヨヘイト系排外差別主義者の集合体にも似たトランプ主義勢力の前に口を噤んではならない。

ネトウヨや差別主義者らが跋扈するネット世界に乗り出して、間断なくカウンターアタックを仕掛けるべきだ。ネトウヨが10のフェイク主張をするなら、リベラル派は20の真実とファクトで彼らの嘘を撃退するべきである。

トランプ主義&ネトウヨヘイト系排外差別主義者連合との戦いは今始まったばかりだ。自由と平等と寛容と多様性を信奉する者は、立ち上がって戦いを続けなければならない。

民主主義は黙っていればすぐにも壊れる儚いものだ。トランプ主義者らの蛮声と暴力を放置すれば、たちまち破壊されてしまう。

ファシスト気質の政治勢力との闘いは、終わることなく続くのが宿命である。





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