南の島の冬は憧れである。寒くないからだ。
島の春は活動的である。3月には早くも海開きがある。
海は僕の遊び場であり学びの場所であり続けた。
海では泳ぎ、釣りをし、追い込み漁に興奮し、潮干狩りを楽しみ、裸馬を駆って水浴びをしたりした。
僕は間もなく島を出て那覇に学び、大学進学で上京し、ロンドンの映画学校で学んだ。
その後、東京、ニューヨーク、ミラノでドキュメンタリー及び報道番組の制作に勤しんだ。
その間も海はいつも僕の関心の的であり、友であり、喜びであり続けた。
ロケやリサーチ旅の合間にも海に遊び、休暇ではほぼ常に海に親しむ。
島を出て以降も続けた海の遊びは釣りである。
釣行はアメリカでも、今住まうイタリアでも、時間が許す限り出かけた。
今この時の早春の島では、浜を歩き、潮風と戯れ、思い出に浸り、若葉色の内海とコバルトブルーの外海の絶景を楽しんでいる。
釣りで時間を潰すのはもったいないと感じる。
それは、あるいは、ただ単に自分が若さを失ったせいかもしれない。
だが、釣りの獲物の動向に集中する緊張がない分、より平穏でリラックスした気分になれる。
得がたい時間である。