喜平表650

3月末、島の海開きは寒くて浜に下りられなかったという知らせを那覇の栄町市場の飲み屋で聞き、4月2日から一週間、東京で花見をし、飲み、食べ遊んだ後、香港経由でイタリアに戻った。

イタリアも春である。

だが同じ春でも空気の芯に暑気が潜む島の春とは違う。

いわば冬を打ち負かした暖気が、じわじわと辺りの環境に染みこんで充満していくような、本来の春らしい空気感である。

菜園には雑草が生い茂っている。

まずチビ耕運機を駆って土を起こし、各種サラダ菜の種を撒き、トマトやピーマンやナスまたズッキーニなどの果菜類の苗を買って植え付けて行く計画。

日本からの戻りが遅かったので少し動きが鈍くなるが、これからでも野菜たちは十分に育ってくれるだろう。

東京では学生時代の友人のPranks(ペンネーム)君にも会った。

彼はほぼ60歳になろうとする頃ふいにイラストを描きはじめた。

10年ほど前の話だ。

還暦まで自らの絵描きの才能に気づかなかったという男は不思議だが現実だ。

数千枚が仕上がった時に展覧会や出版を行った。僕の記事にも幾つか使わせてもらった。

人生を振り返る年代になっても描き続ける彼の姿は、驚きと勇気と元気を辺りに振りまく。

僕を含む同年代の最早若くない者たちをも鼓舞して、頑張ろうという気にさせてくれる。

来し方を見返すのもいいが、人生は常に勝負と捉え心して進むべし、という生き方もまたありだろう。

テレビ屋の僕は、コロナ禍を機にもうロケには出ないと腹を決めたが、飽きが来ない限りは執筆に力を入れようなどと思っている。

執筆と旅と野菜作りが今の僕の日々である。

そこにはワインとビールと少しの日本酒などが彩りを添える




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