世界約14億人のカトリック信者の心の拠り所であるバチカンは、かつて大ヨハネ・パウロ2世の力で前進した。
だがバチカンは、彼の後任のベネディクト16世時代に後退、あるいは停滞した。
2013年、バチカンはフランシスコ教皇の誕生によって再び希望の光を見出し、前進を始めた。
フランシスコ教皇は徹底して弱者に寄り添う「貧者の教会」の主として、疎外され虐げられた人々を助け、同性愛者や破綻した信者夫婦の苦悩を受け留め、勇気を持って忠実に普遍的な愛に生きよ、と人々を鼓舞し続けた。
2019年には来日して、「核兵器の保有は倫理に反する」と呼びかけ核抑止論を真っ向から否定した。
彼はまたキューバとアメリカの関係改善に尽力し、バチカン自身と中国との和解劇も演出した。
同時にバチカンの改革も積極的に推進。シリア内戦に始まる世界紛争の終結を目指した活動にも余念がなかった。
フランシスコ教皇は、宗教的また政治的にも大きな存在だった。
だがそれよりも彼は、人間として偉大な人物だった。
清貧の象徴であるイタリア・アッシジの聖人フランチェスコの名を史上初めて自らの教皇名とした彼は、その名の通り飾らない性格と質素な生活ぶりで信徒は言うまでもなく異教徒にさえ愛され、尊敬された。
ローマ教皇という巨大な肩書きではなく、人格によって人々を平伏させたのがフランシスコ教皇だった。
それは現上皇である平成の天皇が、天皇という地位ではなく、人間力によって日本人と世界世論の深い尊敬を集めた事実とも重なる。