大の里650

大相撲5月場所は大関大の里の優勝で幕を閉じた。

全勝優勝も期待されたが、結果は14勝1敗。それでもりっぱな成績だ。

2場所連続の優勝で横綱昇進も確実にした。

怪物とも呼ばれてきた大の里は、横綱昇進までにかかった場所数が伝説の輪島を抜くなど、大物ぶりが目立つ力士だ。

だが彼の相撲には、磐石と形容できるほどの強さはまだない、と僕は見る。

夏場所5日目、強力な押し相撲の玉鷲を一気に寄り切った相撲を見たときは、強さは本物だと実感した。

その後も大の里は勝ち続けた。だが玉鷲戦で見たいわば不動の強さのようなものは、僕の目には再びは映らなかった。

その理由ははっきりしている。

大の里はパワーだけで相手を圧倒していて、四つ相撲の型がない。

彼の得意な戦い方は、右差し左おっつけでがむしゃらに前に出る形だ。そこで巨体と馬力とスピードが合わさって相手を圧倒する。

四つ相撲が好きな僕にはそこが物足りない。

いまこの時面白いのはウクライナ出身の若武者安青錦と若隆景だ。

巨人の大の里に比較すると小兵にさえ見える彼らのほうが、技能的で味わい深い相撲を取っている。

綱を張る大の里には、巨体を繰り出してのぶちのめしばかりではなく、技能相手を翻弄する四つ相撲もぜひ身につけてほしい。



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