650

9月22日、イギリスがパレスチナ国家を正式に承認した。

イギリスの前にはカナダとオーストラリア、またすぐ後にはポルトガルもパレスチナを国家承認した。

さらにフランスも一日遅れでそれらの国々に続いた。

イギリスは2000年以上続くユダヤ・パレスチナ問題を近代になって複雑化させた張本人だ。

同国は第一次大戦中にそれぞれが矛盾する3つの狡猾因業な秘密協定を結んだ。

そのうちの一つはアラブ人に独立国家を認め、もう一つの協定ではユダヤ人国家を認めるとした。後者はユダヤ人の金を横取りするのが主な目的だった。

第1次大戦が終わるとパレスチナはイギリスの委任統治領となった。するとユダヤ人との秘密協定に沿ってパレスチナにユダヤ人が移住し始めた。

当初ユダヤ人は先住のアラブ人と平和共存していた。だが入植者は増え、金にあかせて土地を買いまくってはアラブ人を圧迫排除する動きに出た。

ユダヤ人入植者は第2次大戦とホロコーストを経てさらに増え続け、対立はますます激しくなった。イギリスは大戦後の1948年、パレスチナの統治を諦めて国際連合に問題を丸投げした。

つまり世界中でしばしばやってきたように、散々甘い汁を吸った後、無責任に問題を放置してトンずらしたのだ。

それから77年後の先日、パレスチナ人を虫けら同然に見なすトランプ大統領を、チャールズ英国王はまるで聖人君子をもてなすようにもてなした。

相変わらずパレスチナ人民を貶めて平然としていると僕の目には映った。

英仏の2大国がアメリカの意向に逆らってパレスチナを国家承認したが、実のところそれは象徴的なアクションに過ぎず、ガザでの殺戮も終わらなければパレスチナ国家の独立も起こりえない。

アメリカがイスラエルを抑えてパレスチナの国家樹立を認めない限り、現状は決して変わることはないのだ。

ましてや飽くまでもイスラエルの蛮行を支持し、パレスチナ人を殲滅して彼らの土地をリゾートに造り変える、と本気で考えているトランプ大統領という人非人の心を持つ男が、アメリカを「独裁統治」している限り哀れなパレスチナには明日はない。

そうではあるが、しかし、イギリスが今この時トランプ大統領の顔を潰してまでパレスチナを承認したことは、「欧州の良心」の発露のひとつで道徳的に大きな意義がある。

トランプ大統領の顔色を窺い忖度に終始し、「現時点での承認は停戦や中東和平の実現には繋がらない」 と岩屋外務大臣の声を使って痴ほうじみた声明を出した日本政府の姿勢は無残だ。

国家承認はパレスチナ情勢の進展には資さない、という日本政府得意の姑息な建前レトリックが、トランプ大統領を怖れる卑怯者の本音隠匿術であることを世界は知らないとでも思っているのだろうか。



facebook:masanorinakasone