sohei-kamiya&参政党議員650

公明党が連立離脱というニュースが駆け巡っている。自民党の高市新総裁がほぼ自動的に首相になるどころか、誰が次の総理大臣になるのか見通せない、混とんとした状況になった。

どの党が連立に加わっても、また自民党が政権を掌握できなくても、極右化する日本の政治の危険度に変わりはないので❝高市政権が発足したなら❞という前提で意見を述べておくことにした。

高市早苗自民党総裁誕生に関する直近記事に多くの方からコメントやメッセージが寄せられた。

最も多かったのが記事の終わり:「高市政権は船出と同時により右カーブではなく左カーブ、即ち中道寄りへと政策も心情もシフトしていく」に対する疑問や反論である。

多くの方が、高市政権は左寄りにシフトする、と僕が主張したと誤解しているようだ。

極右の高市政権がリベラルになる訳がない。そうではなく、ファシスト気質の高市政権は船出と同時に❝現実路線❞を取るだろう、というのが僕の言いたいところだ。

それをしないなら、少し大げさに言えば、中国・韓国・北朝鮮と戦火を交えない限り、彼女の極端な超国家主義者魂の立つ瀬がないだろう。

だがさすがの高市ちゃぶ台返しオヤジ首相でも、隣国と火ぶたを切るほどの狂気はまだ持ち合わせていないだろうから、とりあえずはファシストの正体を秘していわば脱悪魔化をはかる。

要するに現実路線に立ち返る、と考えたのである。

だが全く違う結果も考えられる。

高市首相は日本独特の右翼カルト暴風に吹き巻かれて、ますます右へと突き進みついには政治的に自爆死するかもしれない。

それはここ欧州の極右にはあり得ないことだ。

欧州にも右傾化の強風が吹き荒れている。

欧州に於ける極右の台頭はリベラル勢力の驕りに対する民衆の怒りもあるが、最大の要因は強い反移民感情である。増えすぎた移民に欧州の人々はいら立ち、右派はその不満を利用して勢力を伸ばしている。

だが欧州には「欧州の良心」がある。そのため各国政府による移民排斥の動きには一定のブレーキがかかる。

僕が規定する欧州の良心とは、欧州の過去の傲慢や偽善や悪行を認め、凝視し、反省してより良き道へ進もうとする“まともな”人々の心のことだ。

欧州は世界各地を侵略し殺戮をくり返し、域内の紛争も軍事力で解決するのが当たり前の、野蛮で長い血みどろの歴史を持っている。そして血で血を洗う凄惨な時間の終わりに起きた、第1次、第2次大戦という巨大な殺戮合戦を経て、ようやく「対話&外交」重視の政治体制を確立した。

それは欧州が真に民主主義と自由主義を獲得し、「欧州の良心」に目覚める過程でもあった。

欧州の良心はキリスト教の博愛の精神によって補強されより寛大な方向に展伸するが、第2次大戦後にさらに拍車がかかった。

つまりドイツ国民のナチズムへの徹底総括と深い反省、またイタリア国民の強力な反ファシズム感情がヨーロッパ中に大きな影響を与えて欧州の良心はいよいよ強固になった。

欧州に於ける政治の右傾化、また民衆の反移民感情は欧州の良心と並存している。

政治の右傾化や反移民感情は多分に感情的だが、欧州の良心には理がある。その理が政治の右傾化を監視し反移民感情に待ったをかける。制御心が働くのだ。

その情動には極右も無縁ではあり得ない。

例えば移民排斥を叫んで支持を広げ、ついには政権の座にまで就いたここイタリアのジョルジャ・メローニ首相がその好例だ。

メローニ首相は、ファシスト党の流れを汲む「イタリアの同胞」(党)を率いて反移民感情を人々の間に搔き立てては支持を伸ばし、ついには首相にまで上り詰めた。

昇りつめると彼女は政権公約を果たすべく移民規制に乗り出したが、思うようには進んでいない。いや、思うように進んでいないのではなく、彼女には移民を無慈悲に徹底的に排斥する意思はないのだ。

不法移民を規制する方向には動くものの、彼女の中にある欧州の良心がそれを抑制する。ましてや彼女は難民移民の徹底保護を主張してやまないローマ教会の信者だ。

彼女と同じ感情は欧州の右派に多かれ少なかれ宿っている。そして彼らは反移民レトリックを用いて民衆を主導し勢力を伸ばし続けている。

同時に彼らは政権の座に就くと常識的になるだろう。不法移民、悪意ある外国人は厳しく取り締まるとしつつも、欧州の良心に促されて彼らを平等に扱おうとする情動が働くのだ。

彼らは極右らしく暴力的だが、かつてのナチスのように非情な人種差別意識をむき出しにして人々に牙を剥くことはあり得ない。

欧州の今この時の極右勢力はかつてのナチスやファシストではない。

ヒトラーはヒトラーを知らなかった。だがいま欧州で最も大きな脅威と見られているドイツの極右Afdはヒトラーを知悉している。だから彼らはヒトラーの轍は踏まない。

同様にムッソリーニはムッソリーニを認識できなかったが、ムッソリーニを良く知るイタリアの同胞は、メローニ首相をより穏健な極右、あるいは中道寄りに向かう急進右派たる存在に造り変えた。

日本ではあたかも欧州の極右のように反移民をあおる参政党が躍進した。各野党もそれに近い主張をした。自民党の総裁選では高市早苗候補が外国人差別を煽る動きにさえ出た。

だが世界の国々に比較すると日本の移民の数などたかが知れたものだ。ところが参政党を筆頭にする右派は、アメリカや欧州の真似をして選挙で反移民キャンペーンを張った。つまり彼らは例によって欧米の物真似をしたのである。

そうであれば可愛いもので取るに足らない。

しかしながら、その中身は日本独特の天皇崇拝・靖国偏執跪拝・国家神道狂信・日本会議及び安倍憑依教団等々が一体になったカルトの顕れである恐れがある。

一見すると、右傾化という世界共通の現象の中にあるようだが、実はそこには属さずに孤立し鬱屈して牙を研いでいる、デモーニッシュななにかのように見えるのだ。

極右の流れが本流となり、さらに激流となって世の中を席巻するのは、中道や左派の主要政党が彼らの真似をして国民の関心を買おうと考える時だ。そうなると極右モメンタムは制御不能となって爆発する

欧州の極右の動きには因果があり筋道がある。熱に浮かされて天皇崇拝や靖国遥拝や国家神道などを叫ぶ神懸かり的な精神論が入る余地はない。

ところが日本の場合はそうした理や制御心が働かないように映るのだ。いわゆる先進国のうちでは圧倒的に少ない移民に対して、既述のように参政党が突然憎悪を爆発させ、他の保守勢力が追随する。政権党の自民党も例外ではない。

繰り返しになるが、欧米を含む世界の流行が日本で根拠なくコピーされるパターンである。だがその流行は歌やファッションの流行りではない。偏見差別と、究極には殺戮行為にまで簡単に進みかねない反移民運動の流行なのである。

それはやはり日本カルトの顕現としか形容の仕様がない異様な光景だ。カミカゼ的サイコパス政治勢力が何の障りもなく、誰にも阻止されずに当たり前に存在する、世界の中の異形の土地の恐怖だ。

異形の土地は天皇を神と崇める旧人魂と過去の対戦を総括できなかった無念の歴史事実とに守られて厳然として残った。

それに乗っかった日本極右の危険度は、ドイツAfdやイタリアの同胞、またその他多くの欧州極右とは比べものにならないほど高いのである。





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