世界情勢は激しく動いている。
ハンガリーでは、EU加盟国でありながら反EUのスタンスを取り続けたオルバン政権が倒れた。
オルバン首相は2010年からハンガリーを牛耳った。
ロシアのプーチン大統領と米トランプ大統領の支持を受けて、彼はメディアを支配し選挙制度を改ざんするなどの手法で16年間ハンガリーに君臨した。
選挙前、トランプ大統領はルビオ国務長官とヴァンス副大統領をハンガリーに送り込んで、オルバン首相の選挙応援をさせたが、功を奏さずオルバン首相率いるフィデス党は大敗した。
勝者のマジャル氏はオルバン首相と同じ保守派だが、反EUのスタンスは取らないと見られている。それはEUにとっても世界にとっても朗報だ。
なぜならEUはロシアと中国の覇権主義と米トランプ主義に対抗する唯一の力であることが明らかになっている。
そのEUは英国の離脱(ブレグジット)で弱体化した。EUが団結して、特にトランプ強権主義に異議申し立てをし続けるのは重要だ。
その意味でEUの目の上のたんこぶ、オルバン政権の終焉は喜ばしい。
オルバン失脚とほぼ同時にイランとアメリカの停戦協議が決裂した。
それを受けてトランプ大統領は、ホルムズ海峡を米軍の力で封鎖するという、いつもの行き当たりばったり的な仰天策を発表した。
思いつきとデタラメと嘘が主体ながら、世界最強の軍隊をバックに無理やり目的を遂げることもあるトランプ大王大統領である。
海峡を封鎖しているイラン軍もまとめて封鎖する、というコペルニクス的転回のとんでもアイデアを実行して、チャンスをモノにしないとは誰にも言えない。
僕はハンガリー選挙とイラン停戦協議に関わった、ヴァンス副大統領の動向を注視している。
骨の髄までのトランプ主義者で、トランプ大統領の後継者の筆頭と考えられている彼は、ハンガリーのオルバン首相救援に失敗し、イランとの停戦協議も達成できなかった。
そうしたことはトランプ大統領の不興を買って、彼はトランプ後継者レースから脱落するかもしれないという見方が出ている。
そうなればそれは、トランプ後のアメリカの行く末を大きく変える可能性がある。
なぜならトランプ大統領以上のトランプ主義者にも見える彼は、実はそうではないのかもしれない、と僕は考えているからだ。
彼がトランプ大統領の腰巾着の単純な日和見主義者なら、次期大統領になった暁には、トランプ後のトランプ主義をいよいよ加速させるだけだろう。
だが、そうではなく、彼が真に底の深いイデオローグであるなら事態は一変する可能性もある。
つまりその場合のヴァンス大統領は、トランプ主義から脱却して本来の共和党の良い面、あるいは健全な保守主義を、未来志向の目覚しい形に変容させるかもしれないと思うのである。
彼が次期大統領候補から脱落すればそのわずかな希望さえも消える。
のみならず他のトランプ主義者が権力を握るようなら、世界は今以上に暗く不安定な方向に進むのが確実に見える。
