米大統領夫人のメラニア・トランプ氏はホワイトハウスで先日、性犯罪者のジェフリー・エプスタインとの関係を否定する声明を出した。
僕は声明を読み上げるメラニア・トランプ氏の英語のたどたどしさに目が点になった。
たどたどしいという表現はあるいは適切ではないかもしれない。だが彼女の話す英語の訛音が強烈で、同時に流れる英語のテロップがなければうまく聞き取れない語や発音が少なくなかったのだ。
それはネイティブの話し方とは似ても似つかない表音の英語だった。
メラニア・トランプ氏はここイタリアの隣の小国スロベニアの出身である。1970年生まれの彼女は、26歳でアメリカに移住しアメリカ市民になった。
要するに彼女が話しているのは移民の英語だ。訛りがきつくても不思議ではない。むしろそれが当たり前だ。
僕は彼女の英語の訛音に接して、彼女が移民であることをあらためて強く意識したのである。
彼女は2005年にトランプ氏の3人目の妻になったことで「何者か」なった。だがそれは言うまでもなく彼女の語学力が突然ネイティブ並みに上達することを意味しない。
メラニア夫人はトランプという不吉な姓を持つゆえ故にセレブになっているが、ふつうなら自由なアメリカの夢を追って、旧東欧国からアメリカに渡った、どこにでもいるありふれた女性に過ぎなかった。
彼女がホワイトハウスで誰も予期しなかった声明文を読み上げたのは、渡米後30年の時だったわけだが、とてもそうは見えないほどに話し方に癖があった。彼女は語学が得意ではないのだろう。
それはそれで構わない。英語を流暢に話すかどうかは個性の問題だ。
彼女の声明を聞きつつ僕がとっさに思っていたのは、訛りの強烈な「移民」の妻を持つ「移民の国アメリカ」のトランプ大統領が、移民を嫌い移民の排除を政策の中心に据えている冷酷な事実だった。
僕はトランプ大統領という異常人格者にいわば「不気味の谷」現象にも似た違和感と不快感を覚えてしまう。
そしてそれは、トランプ大統領自身も移民の子孫である事実と相まって、ますます異様な雰囲気を帯びる。僕の中の違和感と不快感は怒りになりやがてやりきれない虚無感へと変わる。
MAGA系に限らず白人至上主義者のレイシストらは、自らが移民の子孫であることを忘れて移民排斥を叫ぶ。
トランプ大統領はその狂気の群れの首魁だ。
メラニア夫人の真摯な、拙い発音の声明を聞きながら僕がひたすら思っていたのは、やはり性格破綻者の怪物、トランプ大統領の不気味さだった。
つづく
