トランプ大統領はイーロン・マスク氏などの大物ビジネスマンを引き連れて北京に乗り込んだ。しかし、ビジネスディールも政治的成果もほとんど得ることなく帰国した。
片や習近平国家主席は、米中首脳会談で多くの政略的得点を重ねた。
中でも 新興強国と既存覇権大国の衝突を示唆する「トゥキディデスの罠」論に言及して、中国がアメリカと対等の国であることをトランプ大統領と世界に向けて静かに高らかに宣言した政治的メリットは大きい。
習近平主席は過去には、「トゥキディデスの罠」論を中国がアメリカに楯突くと考えるべきではなく、協調や相互尊重の道を探るべき、とアメリカにややへりくだるニュアンスで語ってきた。
だが、2026年5月のトランプ大統領との会談では、両国が完全に対等であると暗に示唆する文脈で、米中は対立を避けるべきと語った。
トランプ大統領と米閣僚らが習主席の暗喩を理解したかどうかは疑わしい。
トランプ大統領自身は過去にもその言葉を聞いているはずだが、反応は鈍く習主席の指摘を重大視しているようには見えなかった。
もしもその場にヴァンス副大統領が同席していれば、あるいは彼は即座に習主席に反論してアメリカの面子を保ったかもしれない。
彼はローマ教皇がイラン戦争にからめてトランプ大統領を名指しで批判した際は、「教皇は1000年以上にも渡るカトリックの正戦論を思い出すべきだ」と言下に反論してボスのトランプ大統領を擁護した。
トランプ政権のイデオローグとして一目置かれるヴァンス大統領は、中国に対するアメリカの優位性を習主席にピシャリと言い返した可能性がある。
たとえば習主席の「トゥキディデスの罠」は「蟷螂(とうろう)の斧 」であるなどと。
そういうやり取りを見たかった気が少ししないでもない。
