占い師でタレントの細木数子を描いたNefflix配給の9本シリーズのドラマ「地獄に堕ちるわよ」を見た。
仕事師として、詐欺師として、叩き上げとして、占術家として、タレントとして、そしてなによりも女として破天荒な生涯を送った細木数子の物語は面白く、9作品を一気に見てしまった。
主演は戸田恵梨香。
今はないロンドン発の、NHK系列のJSTVドラマで見た若いときの彼女は、キュートできゃぴきゃぴした印象の豆ロケット的名花だったが、この「地獄に堕ちるわよ」では、見事に初老の悪女を演じてみせた。
光には影が寄り添い傑作には悪女が躍動する。女優は悪女を演じてナンボだ。戸田恵梨香はこの名作の悪女演技で確実に名女優になった。
男の好みにおもねるだけの、日本独特の清純派女優ほどつまらないものはない。
絵に描いたような清純派女優・吉永小百合は、きっと生身の本人はすばらしい女性なのだろうが、女優としてはクサく、ダサく、ときめかない。
清純派女優というカテゴリーは、女性を男の慰み者とみなす、男尊女卑思考てんこ盛りの日本文化が生み出す一大奇作だ。
戸田恵梨香には元々清純派という雰囲気はなかった。顔はどちらかとうと綺麗なあどけないものだったが、自立したキャラクターの印象が強かった。、
男性ファンが望む可憐、清純、透明感、清廉、加えて品行方正などの属性が、パッケージ化された存在ではなかった。
それでも高校生から初老の女までの悪女のノリを自然体で演技する力量は、一流女優の誕生を確信させた。
戸田恵梨香は作品完成後のインタビューで
「細木数子は人々が社会の反発を恐れて言いたくても言えないことをズバズバ言ってくれたから人気があったんではないか。占いは当たらなかったという指摘もあるが、細木さんの話は、自身が生きてきた経験を語ることが多いな、という印象を受ける。細木さんの人生論が世間を魅了したんじゃないかと思う」
と洞察眼の鋭い意見を言っている。
彼女はきっと、小説などのすぐには役に立たない本も多く読む、本物の読書家に違いない。
戸田恵梨香は作品の中で、先に触れたように女子高校生から初老のしたたかな女性までを、何の違和感もなく演じ分けた。まるで美しい化け物のような化性豊かな能力である。
それは彼女の女優としてのもうひとつの凄さ、あるいは巨大な幸運、と僕の目には映る。
