2026年9月6日実施されたドイツ東部ザクセン・アンハルト州議会議員選挙でAfDが44%の得票率でダントツ首位となった。
欧州をはじめとする世界の多くのメディアが、“極右Afdの大躍進”“ドイツの未来を変える分岐点”“右派ポピュリズムのさらなる飛躍”“激震”等々の枕詞を冠して大々的に報じた。
しかし僕は「ヒトラーはヒトラーを知らなかった。だがドイツ極右のAfdはヒトラーを知っている。だから彼らはヒトラーにはならない」と、持論を胸中でつぶやきつつ状況を横目に観察してきた。
Afdの躍進を問題にするのであれば、2025年のドイツ総選挙で同党が20,8%の得票率で、突然国政の第2党に躍り出たことこそが最大の衝撃だ。
ザクセン・アンハルト州議会議員選挙でAfdが勝利することは、昨年の総選挙での同党の飛躍以来いわば既定路線で、目新しいものではなかった。
Afdはヒトラーのナチス党をほうふつとさせる危険な顔を持っている。例えば反移民、反欧州(EU)、過剰な民族主義、反体制スタンス、既存メディア攻撃&ネットメディアを濫用など、極右特有の手法やレトリックや思想また政策だ。
あらゆる政党は在野にある時は、政権掌握を目指して過激な主張をすることを辞さない。Afdもその例に洩れない。だがAfdも将来、もしも政権に参加することがあれば、今よりは穏健な中道寄りの主張や政策にシフトするだろう。
僕のその主張には根拠がある。つまり、ここイタリアでの直近の歴史だ。
2022年、ここイタリアの極右政党「イタリアの同胞」が総選挙を経て議会第一党となった。
それを受けて、ネオファシストの烙印を押されることさえあった同党のメローニ党首が、イタリア初の女性首相に就任した。
僕はそれまで、「(ファシストの)ムッソリーニはムッソリーニを知らなかったが、メローニ氏はムッソリーニを知悉している。だから彼女はムッソリーニの轍は踏まない」と予想しそこかしこでそう主張していた。
すると彼女は政権掌握とほぼ同時に、極右然とした過激な政治スタンスを封印して、僕が予想した通りの中道穏健寄りにシフトし、現実路線を歩み始めた。
メローニ首相は就任以来変わらずにその道を進み続け、周知のように今や欧州でも尊敬を集める強い右派政治家になった。
将来政権に参加する時のAfdとそのトップも、必ずメローニ首相のように右派現実路線へとシフトして行くだろう。
それでなければAfd政権は、たちどころに崩壊するに違いない。なぜならドイツ国民の良心と欧州全体のそれが、彼らのナチス化を許さないからだ。
そこが政権を握りながらも現実路線に向かわない高市極右政権とは違う。
戦争の徹底総括を怠ったために、過去から目を逸らす歴史修正主義者が跋扈し高市政権を牛耳る日本には、ドイツのそして欧州の良心に匹敵する「日本の良心」が育っていない。
だから高市首相は、イタリアのメローニ首相が支持勢力のうちの極右モメンタムを厳しく制御するようには、自らの支持者の極右勢力を制御できずにいる。
そこが欧州の極右と高市極右政権が大きく違うポイントだ。
Afdはもしも政権を握った暁には、窮屈で不寛容で時には排外差別主義的な政策の導入も躊躇わないだろう。しかし彼らは、既述のように、かつてのナチス党ひいてはヒトラーにはならない。
そうはいうものの無論、極右勢力は政権からは離れた位置に隔離して置くほうがいい。
彼らが激し破壊して、自身と他者の全てを道連れに暴走し、ついにはかつての日独伊三国同盟のひそみに倣って、死の崖からジャンプする可能性は決してゼロにはならないからである。
