それはイエス・キリストが重い病気や死の淵にいる病人を、額に手を当てて祝福するキリスト教伝統の宗教画を模したものだった。
トランプ大統領が古代の赤い表衣を着て、不遜にもイエス・キリストよろしく病人の額に手を当てて祝福するという、信じがたい愚劣な合成画像である。
これに対する世界中のキリスト教徒の反応はすばやく、怒りに満ちたものだった。カトリック、プロテスタントを問わず嵐のようなブーイングが地上に木霊した。
恐れをなしたトランプ大統領は、画像は(イエスではなく)医者のつもりだった、といつもの虚言に頼って言い逃れを図り即座に投稿画像を削除した。だが時すでに遅く、信者の怒りは大波となって世界中に広がっていった。
トランプ大統領の人格は、悪性のナルシシズムと変幻自在の虚言癖また万能幻想感覚で造られているように見える。
今回そこにむき出しのメシア・コンプレックス、つまり自らを救世主と信じ民衆を導く特別な使命を帯びていると思いこむ狂気が加わわって、彼の危険性はいよいよ増したようだ。
そこで不謹慎に聞こえるかもしれないことを承知で敢えて言っておくことにした。
馬鹿は死ねば治るが、殺しても死なないトランプ大統領は大王どころか神だ、と主張するMAGA系仕様のAIがあるらしい。
だがその人工知能は、当事者のトランプ氏以上の大嘘つきという見方もある。それって、ホントはどうよ? と僕は混乱するばかりだ。
AIが馬鹿か利口か嘘つきかはAIの判断に任せるとしても、トランプ大統領が殺しても死なない、という主張には一理がある。
生身のトランプ氏の首を落とせば、さすがに肢体は崩壊するだろうが、彼が作り出したトランプ主義は死なないからだ。
良識も倫理観も慈悲の心も、思い遣りも信義も人権意識も全く持ち合わせないらしいトランプ大王、もとへ、トランプ大統領は、排除されない限り世界を暗黒へと導き続ける。
要人を誅戮する行為は政治的に無意味だという考え方がある。
暗殺などの一過性の暴力は個人的な行為であり、一時的に社会の混乱や政治的な空白を招くことがあっても、根本的な世直しにはつながらない、というのがその理由だ。
それはつまり、議会主義や立憲民主主義の精神を重んじる立場からの意見だ。
暴力による政敵の排除を、文明を汚す野蛮行為と捉えて否定し、世の中を変えたいなら言論や政治活動によって成すべき、という崇高な気構えである。
だが世界の歴史を見れば、大物の暗殺が社会を大きく変えた例は少なくない。変えるきっかけになったケースはさらに多い。
近代なら例えばリンカーン、ケネディ両アメリカ大統領の暗殺、ガンジーのそれ、また古代にはカエサル暗殺など、多くのケースで政治体制や社会構造が変わるきっかけが生まれた。
ごく最近の例で言えば、安倍晋三元首相の暗殺事件も、統一教会と政治の癒着を暴き出して社会を震撼させた、という大きな意義を持つ。
だがそれによって日本の政治は変わるどころか、逆に隠蔽体質を強めた。そういう成り行き事態が日本社会の問題を抉り出している。
安倍元首相と統一教会と隠蔽体質の文化が社会の核心にある、と暴露された日本は最早安倍暗殺事件以前の日本ではない。やはり何かが変わったのだ。
では世界を揺るがせているトランプ悪太郎大統領を誅するのは果たして誰か?
習近平主席?プーチン大統領?あるいは彼らの連合軍?アメリカ抜きのNATO?
いずれも力不足だ。トランプ大統領の敵ではない。
米軍を膝下に置くトランプ大統領は余りにも強すぎる。無敵と言ってもいいだろう。
いま挙げた全ての勢力が束になってかかってもあるいは勝てないかもしれない。
辛うじて彼を倒せるのはおそらくCIAだけだろう。だがCIAも今や完全にトランプ大統領の支配下にあるのだからお手上げだ。
トランプ大統領は国際法も人権も民主主義も同盟国との信義も司法の独立性も全て無視してやりたい放題をしまくっている。
彼は完全に排除されない限り止めることはできない。だが世界は彼を肉体的に粛清する術を持たない。
ならば彼はこのまま専横を続けるのか。むろんそうではない。
来たる11月の米中間選挙で民主党が勝てば、彼の政権はレームダックとなり、そのさらに2年後の大統領選挙で共和党が敗れれば、世界は一息つくことができる。
しかし、トランプ大統領が無理やり築いた無法者の論理、つまりトランプ主義は完全に消えることはなく、世界はしばらく暗黒の帳に覆われた状態が続くだろう。
例えて言えば世界は、再び弱肉強食の原始的な暴力時代に逆戻りし、各国が殺し合いを続ける。その後でようやく世界は対話と和合が支配する、トランプ以前の文明社会に戻る。
だがそれまでまでにはかなりの時間がかかるだろう。愚かな人類は学ぶことを知らないからだ。
アメリカ国民ではない者は米大統領を選ぶ選挙には参加できない。しかし、声を挙げることでアメリカの大統領選挙に影響を与えることはできる。
今このときはトランプ大統領を排除することは誰にもできないが、政治的に彼を抹殺することは可能だ。
われわれはそのことを信じて声を挙げ続けなければならないのである。


















