
トランプ大統領は関税を武器にカナダとメキシコを平伏させ、 返す刀でガザの住民を追い出してリゾートに造り返る、というぶっ飛んだ案を発表した。
それはまさしくヒトデナシにしか思いつけないグロテスクな考えだ。なぜならそこには、イスラエルに痛めつけられた人々への憐憫の情がひとかけらもないからだ。
まさに金のためなら何でもする“不動産開発業者“の発想でしかない。アメリカ合衆国大統領の戦略的思考とはとても言えない。
人間を人間と見なせない者は人間ではない。
それがトランプ大統領の「ガザの住民を全て排除して“中東のリビエラ”にする」という発言を聞いたときの僕の率直な思いだった。
潰滅したガザを、故郷を、追い出されるパレスチナ人は、なんと哀れで何と屈辱にまみれた存在だろうか。
ところが行き場を失くしたパレスチナ人の中には、悲しいことにトランプ大統領の提案を受け入れる者も出るだろうと見られている。
ガザの疲弊はそれほどに深く徹底したもので、回復不能とさえ考えられているからだ。
ガザを壊滅させたのは、トランプ大統領の発言をニヤニヤ笑いながら隣で聞いていたネタニヤフ首相である。
彼はまるで米大統領の発言を引き出すために、ガザの破壊と殺戮を実行したようにさえ映った。
ネタニヤフ首相と、パレスチナの消滅を熱望するイスラエル内外のウルトラ極右シオニストらの罪は深い。
住民を追い出してガザをリゾート地に作り変えようという案は、政権内の高官らが集い意見を出し合ってじっくりと練ったものではなく、トランプ大統領独自のものらしい。
いかにも“不動産開発業者”トランプ氏が思いつきそうなアイデアだが、恐らくその前に、娘婿のジャレッド・クシュナー氏の入れ知恵があったのではないか、とも言われている。
ユダヤ人のクシュナー氏は、パレスチナを地上から消すと考える同胞と同じ立場で、ガザを開発して金を儲けると同時に、そこの住民をイスラエルのために排除したいと願っているらしい。
自らの家族と金儲けのためにはひとつの民族を浄化することさえ辞さない、という考えはすさまじい。トランプ一族の面目躍如というところだ。
皮肉なことにトランプ氏のアイデアは、その非人間的な側面を敢えて脇において観察すれば、ある意味天才的とも呼べるものだ。邪悪でユニークな思いつきなのだ。
徹底的に破壊されて瓦礫の山と化し、もはや人が住めない状況にまでなっているガザ地区を、米軍を中心とするアメリカの力で整理して立て直す。
それは他国の内政には首を突っ込まない、というトランプ大統領の「アメリカ第一主義」に反する動きになるだろう。
ガザ地区をアメリカが一旦支配して元通りに整備する、というのがガザ住民のためのアクションなら、人道的見地からもすばらしい案である。
しかし残念ながら、彼が考えているのは住民を完全無視した金儲け案だ。むごたらしいまでの我欲。
繰り返しになるが、とても人間とは思えない惑乱ぶりである
トランプ主義は、行き着けば自由主義社会全体の総スカンを食らう可能性がある。
そうなった場合、欧州とアラブ・アフリカ、またトランプ追従に見切りをつける見識があれば日本も、たとえば中国と手を組む可能性があり得る。
独裁国家、権威主義政権として欧米と日本ほかの民主主義世界に忌諱されている中国だが、トランプ主義の挙句の果ては、つまるところ中露北朝鮮にも似た恐怖政体だ。
ならば“トランプ小帝王“に苛められ脅迫され続けるよりも、中国のほうが御しやすい、と自由主義社会が判断することがないとは、誰にも言えないのである。