全勝優勝も期待されたが、結果は14勝1敗。それでもりっぱな成績だ。
2場所連続の優勝で横綱昇進も確実にした。
怪物とも呼ばれてきた大の里は、横綱昇進までにかかった場所数が伝説の輪島を抜くなど、大物ぶりが目立つ力士だ。
だが彼の相撲には、磐石と形容できるほどの強さはまだない、と僕は見る。
夏場所5日目、強力な押し相撲の玉鷲を一気に寄り切った相撲を見たときは、強さは本物だと実感した。
その後も大の里は勝ち続けた。だが玉鷲戦で見たいわば不動の強さのようなものは、僕の目には再びは映らなかった。
その理由ははっきりしている。
大の里はパワーだけで相手を圧倒していて、四つ相撲の型がない。
彼の得意な戦い方は、右差し左おっつけでがむしゃらに前に出る形だ。そこで巨体と馬力とスピードが合わさって相手を圧倒する。
四つ相撲が好きな僕にはそこが物足りない。
いまこの時面白いのはウクライナ出身の若武者安青錦と若隆景だ。
巨人の大の里に比較すると小兵にさえ見える彼らのほうが、技能的で味わい深い相撲を取っている。
綱を張る大の里には、巨体を繰り出してのぶちのめしばかりではなく、技能で相手を翻弄する四つ相撲もぜひ身につけてほしい。
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